ファーウェイ、PC向け独自OS「HarmonyOS」発表へ 米中対立が生んだ脱依存戦略の次なる一手

2025年5月8日、中国の通信大手ファーウェイは、19日にPC向け独自OS「HarmonyOS」を正式発表すると、現地SNS微博にて明らかにした。
これは同社がスマートフォン向けに展開するOSに続く取り組みであり、WindowsやmacOSに対抗する自社エコシステムの構築を加速させる動きといえる。背景には、米中対立の長期化による技術的自立への強い意志があるとみられる。
ファーウェイ、HarmonyOSで脱Windowsの地盤固め
ファーウェイのPC版独自OS「HarmonyOS」は、中国のSNS「微博」で先行告知されたもので、WindowsやmacOSに次ぐ第三の選択肢を掲げる。
同社はすでにスマートフォン領域でAndroidからの脱却を進めており、PC分野への展開はその延長線上と位置付けられる。
HarmonyOSは「Base」「Ecosystem」「Experience」という三つのコンポーネントで構成される。
Baseはカーネルやグラフィックス、セキュリティ基盤を担う。Ecosystemは150以上の専用アプリを提供し、その中には「Microsoft Office 365」に代わる中国発のオフィスソフト「WPS Office」も含まれるという。
さらに「HarmonyOS AI」と呼ばれる内蔵AI機能もあり、PC操作の自動化や最適化を推進している。
デバイスの自社開発の背景には、2019年以降続く米中対立の影響が色濃い。禁輸措置によって主要部材やソフトウェアの調達が制限されたことで、ファーウェイは独自技術への依存度を高める道を選んだと見受けられる。
独自エコシステムで自立狙うファーウェイ 中国市場優先も普及には課題も
現段階でファーウェイは、PC向けHarmonyOSの海外展開を積極的に行う姿勢は見せていない。中国国内での普及を優先する考えが強く、同国の国産化促進政策と歩調を合わせる形と見られる。
今回の発表は米国製品への依存脱却という文脈において、大きな転換点となる。
最大のメリットは、技術的自立を高めることで、今後も続くと予想される米中対立下において、自社のビジネス継続性を確保できる点だ。
一方で、企業や個人ユーザーが直面する課題も多い。
まず、HarmonyOS専用アプリは150種類と限定的であり、既存のWindowsアプリとの互換性は不透明だ。
また、AI機能を前面に押し出す戦略は、ユーザーの習熟コストやセキュリティリスクへの不安を伴うことも考慮が必要となる。
ファーウェイのエコシステム戦略は、スマートフォン、PC、IoTを一体化させることで、ユーザー囲い込みを強化しようとするだろう。
今後、中国市場での受け入れ状況次第では、海外市場への拡張に向けた布石となる可能性も高い。