中国のAIチップ市場数年内に500億ドル規模へ　ファーウェイ台頭示唆

2025年5月6日、米ロサンゼルスで開かれた「ミルケン・カンファレンス2025」にて、エヌビディアのCEOジェンスン・フアン氏が、中国のAIチップ市場は数年以内に500億ドル規模へ成長すると予測し、同市場でのファーウェイの台頭を示唆した。
米国政府の輸出規制による技術空白が、競合の追い風となる構図を浮き彫りにしている。

500億ドル市場は誰の手に　米規制強化が生んだ中国内製化の加速

フアン氏は、米中間で続く技術摩擦がAI分野にも深刻な影響を与えていると語った。
特に、トランプ政権がエヌビディア製の高性能AIチップを中国に輸出することを禁じた点に強い懸念を示した。
この措置により、同社は中国市場からの一部撤退を余儀なくされている。

中国側では、これに呼応する形で国産化の動きが加速しており、フアン氏はファーウェイがその空白を埋めると見ている。
実際、ファーウェイはエヌビディアの主力チップ「H100」に匹敵する性能を持つAI半導体を独自開発しているとされ、市場での影響力を急速に高めつつある。

フアン氏の見立てでは、中国のAIチップ市場は、今後数年で約500億ドルに拡大するという。
この成長は、政府の産業支援策、国内需要の高まり、自国技術への依存度向上といった複数の要因によって後押しされると考えられている。
米国が技術の供給を止めれば止めるほど、中国側の技術開発が加速するという逆説的な状況が生まれている。

分断と主導権争いの時代へ　AIチップ市場が描く米中の未来

今後数年において、中国のAIチップ市場が独自路線で500億ドル規模へと成長するという見通しは、十分に現実味を帯びている。
ファーウェイをはじめとする中国企業は、すでにエヌビディアのH100と同等性能の半導体開発に成功しつつあるとされ、今後は国家主導の支援策や国内企業間の連携によって開発スピードがさらに加速することが想定される。

一方で、米国もこの動向を静観するとは考えにくい。
今後は技術の囲い込みを強化するだけでなく、同盟国との連携による供給網の再編成や、半導体関連ベンチャーの育成支援を通じて対抗措置を講じるだろう。
つまり、米中それぞれが自国陣営内で技術圏を築く「AI版経済圏」の分断が本格化する可能性が高い。

グローバルな視点で見れば、最終的には「技術競争」ではなく、「技術と規制、そして市場形成をめぐる主導権争い」に発展していくと予測される。
これは企業単体ではコントロールできない領域であり、政治と産業が緊密に絡み合う新たな時代の幕開けを意味している。
今後、国際社会は「競争」と「協調」のバランスをどう取るかという、より複雑な判断を迫られることになるだろう。