日本調剤、AI薬歴作成支援サービス「cotore」を全763店舗に導入

日本調剤は2025年5月13日、AIを活用した薬歴作成支援サービス「cotore(コトリ)」を全国763店舗に導入したと発表した。調剤薬局業務において、AIが実務に深く関与する初の大規模展開であり、薬剤師の業務効率化と働き方改革の両面において注目される。
対人業務への回帰を促す「cotore」のAI要約機能、日本調剤が全店導入に踏み切った理由
日本調剤は、全国展開する大手調剤薬局チェーンとして、医療業界のデジタルシフトに積極的な企業である。
同社は2024年11月より、AI薬歴作成支援サービス「cotore」を50店舗に先行導入し、薬剤師の業務負担軽減や業務品質の向上に明確な成果が確認されたことから、2025年5月に全763店舗への導入を正式決定した。
cotoreは、薬剤師と患者の服薬指導中の会話を録音し、AIが必要情報を自動抽出・要約する機能を有する。このプロセスにより、これまで手入力で作成していた薬歴作成の作業時間を大幅に短縮できる。
日本調剤の社内調査によれば、薬剤師1人あたり1日平均1時間25分かかっていた薬歴作成業務が、大幅に削減される見込みだという。
加えて、cotoreは内容の抜け漏れを防ぎ、記録の客観性向上にもつながるとしている。
さらに、PC・タブレット・スマートフォンに対応しており、在宅訪問時にも柔軟に利用できる。
AIで変わる薬剤師の役割、cotore導入がもたらす医療現場の未来とは
cotoreの導入によって、薬剤師は業務の中心を再び「人」に向けられるようになると期待できる。
従来、患者との対話に重きを置きたいと考えながらも、記録作業に追われていた現場では、AIの介入が時間的な余裕を生み出す。結果として、服薬指導の質や患者満足度の向上につながる可能性がある。
また、医療現場における働き方改革の一環としても、AI活用は注目されてきた。薬剤師の負担軽減は、離職率の低下や業界全体の人材確保にも好影響をもたらすだろう。
一方で、AIの導入がすべての薬局業務に対応可能になるわけではない点には留意が必要だ。cotoreの効果を最大化するためには、薬剤師がAIの出力内容を適切に評価・補完するスキルが求められる。
つまり、AIは補助的役割であり、人間の判断力や経験と連携してこそ真価を発揮するのである。
今後、AIの進化とともに、薬剤師業務の高度化や専門性の強化が進んでいくことが見込まれる。cotoreの全国展開は、医療×AIが日常業務に浸透していく兆しと捉えるべきだろう。