Nextremerが香川にAI開発拠点 地域雇用40人規模へ

2025年5月12日、高知県に本社を構えるIT企業・Nextremerが、香川県高松市「AI開発拠点」を新設する立地協定を県・市と締結した。生成AI関連事業の強化を見据え、地域雇用創出とAI人材育成を推進する。
Nextremerが高松にAI開発拠点を新設
協定書には、Nextremer社長の向井永浩氏、池田豊人知事、大西秀人市長が署名した。新拠点は5月30日、高松市中心部に正式開設される予定である。
Nextremerは、AIシステム開発やデータアノテーション(※)事業を手がけるIT企業で、これまでも自治体や大手企業と連携したAI活用の実績を重ねてきた。
今回の高松拠点開設は、災害リスクの低さや交通アクセスの良さから、香川を中四国エリアでの戦略的な拠点と位置づけたものだという。
協定締結式では、池田知事と大西市長が、さぬきうどんの画像を使ってAIに学習させるアノテーション作業を体験。AI開発の現場に対する理解を深めた。
向井社長は「高松の拠点を活用して事業を伸ばしていきたい」と語った。
新拠点では最大40人規模の地域雇用を見込み、特に未経験者向けの採用や研修制度を整備。地域に根ざしたAI人材の育成と、柔軟な働き方の導入を目指すとしている。
※アノテーション:AIが学習できるよう、画像やテキストなどのデータに意味づけやラベル付けを行う作業。機械学習における基礎的プロセスの一つ。
地域拠点から広がるAI産業の地産地消モデル
Nextremerの進出は、香川県が策定した企業誘致戦略「せとうち企業誘致100プラン」との連動により実現した。AIやDXといった成長分野の企業を呼び込むことで、県内における産業構造の転換と人材の地元定着を目指す政策の一環だ。
高松拠点の中心業務であるデータアノテーションは、生成AI開発に不可欠な工程であり、今後も需要の拡大が見込まれる。
Nextremerはこの分野において、地域の労働力を積極的に活用しつつ、新製品の共同開発など上流工程への進出も視野に入れている。
一方で、地域雇用創出には人材育成の体制強化が不可欠であり、教育機関や自治体との連携強化が課題となる。
また、AI産業の拡大に伴うプライバシー保護や倫理面のガイドライン整備も今後の論点となるだろう。
とはいえ、地方都市におけるAI開発拠点の設置は、都市圏一極集中を打破する試金石とも言える。香川のように災害リスクが低く、生活コストも安定しているエリアは、次世代産業の受け皿として大きな可能性を秘めている。
今回のNextremerの事例が成功すれば、他県でも同様の地産地消型テック拠点の拡大が進むことが予想される。