マイクロソフト、スイスに4億ドル投資 AI・クラウドの拠点強化へ

2025年6月2日、米マイクロソフトはスイス政府とともに、AIおよびクラウド基盤の拡充を目的とした4億ドルの投資計画を発表した。
現地のデータセンター拡張や研修支援などが柱となる。
スイスでAI・クラウド拠点の大幅拡張に着手
マイクロソフトはスイスのパルムラン経済相との共同会見にて、総額4億ドルのインフラ投資を発表した。
対象はチューリヒとジュネーブ近郊に所在する4カ所のデータセンターで、既存設備の拡張と更新を進める。
現地にはすでに1000人規模の雇用が存在しているが、今回の投資がどの程度の新規雇用を生むかについては言及を避けた。
背景には、スイス国内で急増するAI活用とクラウド依存の需要があり、安全かつ高速なインフラの整備が求められていた。
また、マイクロソフトはこの機会に中小企業との連携強化にも乗り出し、AIツールの導入を支援する研修プログラムの拡充も併せて進める方針だ。
欧州戦略の要 人材育成と規制順応が鍵に
今回のスイス投資は、欧州全体におけるAI・クラウドの戦略拠点構築の一環と見られる。
欧州連合(EU)はAI規制の導入を進めており、マイクロソフトにとっても柔軟な体制づくりが急務となっている。
同社がスイスを選んだ背景には、政治的中立性と高度な技術インフラの両立があると思われる。
人材面では、デジタル分野の教育・研修プログラムへの投資が地域経済にも波及効果をもたらすと期待できる。
中小企業にとっても、マイクロソフトと連携することで先端技術の導入が現実的な選択肢となるだろう。
一方で、グローバルな競争が激化する中、技術覇権をめぐる規制・倫理論争が続く可能性もある。
特にEUでは、「EU Artificial Intelligence Act」(EU AI法)が適用されており、取り締まりを強化していることが論争を呼んでいる。
企業主導の投資とともに、公共側の制度整備がどこまで追いつくかが今後の焦点となるだろう。
※クラウドコンピューティング:
インターネット経由でサーバーやストレージ、AI処理能力などのコンピュータ資源を提供する形態。
利用者は自社設備を持たずに柔軟に活用できる。