米マイクロソフト、中国AIアプリ「ディープシーク」の社内利用を禁止 機密流出と情報操作のリスク警戒

2025年5月8日、米マイクロソフト(Microsoft)は、中国企業ディープシークが提供する人工知能(AI)アプリの社内使用を全面的に禁止した。この措置は、機密情報の流出やプロパガンダ(※)への悪用といった深刻な懸念に基づくものだ。
機密データ保護と情報操作の警戒感が背景に MSがディープシークを排除した理由とは
米国時間の5月8日、マイクロソフト社長のブラッド・スミス氏は、上院のAI規制に関する公聴会において、中国企業ディープシーク(※)のAIアプリに関する重大な懸念を表明した。
同氏は「データが中国に流出する恐れや、アプリが中国のプロパガンダに関連すると見なされるコンテンツを作成する」と警告。さらに、「AIが生成するコンテンツが、国家のプロパガンダに利用される危険もある」との見解を示した。
また、マイクロソフトは社内でのディープシーク製AIアプリの使用を正式に禁止していることを発表した。同社が運営するアプリストアでも、すでにディープシークの製品は提供していないという。
※プロパガンダ:特定の思想や情報を広く人々に伝え、意図的に認識や行動を操作しようとする情報操作手段。国家間の競争や対立において利用されることが多い。
※ディープシーク:AIによる文章生成や翻訳、画像認識機能を提供する中国発のスタートアップ企業。国家の情報管理方針との関連性が指摘されている。
AI競争下のリスク管理体制、企業の分岐点に ディープシーク問題が示す今後の展望
今回のマイクロソフトの対応は、グローバル企業がAI技術の利用において慎重な姿勢を取らざるを得ないことを如実に示している。AIを巡る地政学的リスクは拡大しており、米中間の技術的な対立構造は今後さらに先鋭化する可能性が高い。
他企業にも同様の動きが広がる兆しが見られる。
特に国家安全保障や知的財産の保護が問われる分野では、中国製のAIツールに対する使用制限が加速する展開も考えられる。
加えて、米国政府内でもAIの透明性や説明責任を担保する規制案が進行しており、法整備の動きと企業の自主規制が同時に強化される局面に突入している。
マイクロソフトは今後も、生成AIやコパイロット機能といった独自開発の拡充を図りつつ、外部製AIの導入については厳格な審査基準を設けるとみられる。
一方で、ディープシーク側からの公式な反応はまだ確認されておらず、国際的な批判や規制が同社の展開にどう影響を与えるのかは不透明である。