MatrixFlow、AI店員による会話型ショッピングアプリ「アレコレ」公開 検索に代わる「対話」で5万点から最適提案

2025年4月16日、国内AIベンチャーのMatrixFlowが、会話型ショッピングアプリ「アレコレ」のベータ版を発表した。検索に頼らない新しい購買体験を提供し、特に若年層の消費者行動の変化に対応する試みとして注目を集めている。
AIとの会話が検索を不要に 「アレコレ」が提供する新しいショッピング体験
アレコレは、ユーザーが「好み」「利用シーン」「気分」といった曖昧な情報を入力するだけで、AIが5万点以上の商品群の中から最適なアイテムを提案する。取り扱うアイテムはアパレルから家電まで幅広く、ジャンルを横断した柔軟な提案が可能だ。
従来のECサイトが前提とする「検索ありき」の購買導線に対し、アレコレは対話を入り口にする。これにより、「探すのが面倒」「キーワードが思い浮かばない」といった、若年層に多い購買時の課題に対応する構造を取っている。
こうした会話によってユーザーのニーズを自然に引き出し、複数の候補から最も価値のある一品へと導くアプローチは、AIの得意とするパーソナライズとの親和性が高い。さらに、購入提案にはセール情報やクーポンの有無も加味されており、経済的なメリットも享受できる。
現在はWeb版での提供にとどまるが、スマートフォンアプリのリリースも近いとされている。ユーザーにとっては「対話するだけでお得に買い物ができる」という体験が新鮮であり、SNS上での話題性にも期待できる。
「検索しないショッピング」は定着するか 今後の展望と課題
アレコレがターゲットとするのは、選択肢過多による「おすすめ疲れ」や「検索疲れ」に悩む消費者層だ。特に、SNSを主な情報源とする若年層は、情報量の多さゆえに「結局何を買えばよいのか分からない」という心理的負担を抱えやすい。
このような状況において、対話を通じて選択を委ねることができるAIの存在は、心理的コストの低減に寄与する可能性がある。
さらに、MatrixFlowは今後のアップデートにおいて、SNSレビューや口コミ情報をAIが解析・参照する機能の実装を予定している。これにより提案の裏付けが強化され、「なぜその商品なのか」を説明できるAI店員としての信頼性が増すだろう。
単なるレコメンドではなく、「納得できる提案」へと進化していく見通しだ。
一方で、AIによる選択がユーザーの主体性を奪うのではという懸念や、提案精度がニーズを的確に捉えられない可能性もある。しかし、ユーザー行動データの蓄積と自然言語処理の進化により、こうした課題は時間とともに解消されていくだろう。
中長期的には、アレコレのような対話型AIは、ECの領域を越えて、旅行・医療・教育などあらゆる分野に応用される可能性を秘めている。
今後、どの程度ユーザーから支持を得られるかは未知数だが、MatrixFlowの取り組みは未来を先取りする動きとして注目に値する。