LayerXがAIエージェント事業に本格参入 請求書受領業務を自動化する「AI-BPOサービス」から提供

株式会社LayerXは2025年4月7日、AIエージェント事業へ参入し、請求書受領業務などをAIエージェントが代行する「AI-BPOサービス」の提供開始を発表した。
AI×BPOで業務の自動運転化へ LayerXが掲げる新たな挑戦
LayerXは、これまでにSaaSプロダクト「バクラク」シリーズを中心としたバックオフィス支援事業を展開してきた。
今回発表されたAIエージェント事業への参入は、「バクラク」や生成AIおよび大規模言語モデル(LLM)分野で培った技術を応用し、人とAIが協働する業務設計を実現する狙いがあるという。
CEO直下に設置された専門部署が主導し、短期的には業務負担の軽減、中長期的には業務そのものの自動運転化を段階的に進める方針だ。
具体的には、2025年春をめどに「AI-BPO(※)」の第1弾サービスを提供するほか、2025年度内に複数のサービスをリリースする計画である。
最終的には業務自動化のレベル5、すなわち人間の関与なしに業務が完結する状態を目指している。これは、限定条件下でAIが自律的に業務をこなすレベル3、全条件下で人間の介在なく完遂可能なレベル4を経て到達する高度なステージだ。
なお、同社のミッションである「すべての経済活動を、デジタル化する。」というビジョンのもと、このAIエージェント事業は、従来の業務支援SaaSから一歩踏み出した新たな領域での挑戦と位置づけられている。
※AI-BPO(Artificial Intelligence Business Process Outsourcing):AIを活用して業務の一部または全部を外部代行するサービス形態。従来の人手によるBPOとは異なり、高速かつ柔軟な処理が可能。
業務効率化の次の一手 社会実装と市場競争の行方
請求書の受領や処理といったバックオフィス業務は、企業にとって時間とコストがかかる領域であり、自動化ニーズが高い。LayerXが今回のAI-BPO参入でまず着目したのも、まさにこうした実務上の課題解決である。
これにより企業は、人的リソースをより付加価値の高い業務へと再分配できると見られる。
一方で、AIによる業務代行を巡っては、セキュリティや精度、運用フローの変更など導入に伴う課題も少なくない。特に、AIが完全自律的に業務を行う「レベル5」の段階は、技術的成熟だけでなく、社会的信頼の獲得も不可欠となる。
LayerXはこの点においても段階的アプローチを採用し、まずは限定的な業務からの適用を進めていくとみられる。
現在、類似領域ではNTTデータやパーソルなどもAI業務代行の実証を進めており、業界全体がAI実装のステージに突入している状況だ。その中でLayerXは、自社SaaSで得た膨大な業務データと、LLM技術に関する実績を武器に、差別化されたサービス設計を行える可能性がある。
今後の展開次第では、AIエージェントによる業務支援が、単なる業務効率化にとどまらず、企業の競争力そのものを左右する基盤となる日も遠くない。LayerXが目指す「経済活動のデジタル化」は、いよいよ現実のビジネスプロセスへと浸透し始めている。