2026年5月31日、米NVIDIAは、Windows PC向けの新しいArmベースSoC「RTX Spark」を発表した。Microsoftと連携して開発された同チップは、薄型ノートPCでも高度なAI処理やゲーム、クリエイティブ作業を実現することを目指す。今秋から主要メーカーのWindows端末への搭載が予定されており、AI PC市場の競争を一段と加速させそうだ。
薄型PCで生成AIを動かす新世代チップ登場
RTX Sparkは、NVIDIAが推進する次世代AI PC戦略の中核となる製品である。CEOのジェンスン・フアン氏は発表の中で「パーソナルコンピューターを再発明する」と述べ、高性能AIをローカル環境で利用できる新たな計算基盤として位置付けた。
最大の特徴は、従来であれば大型のディスクリートGPUを必要としていた処理を、薄型軽量のWindowsノートPCや小型デスクトップで実行できる点にある。
NVIDIAによれば、90GBを超える大規模3Dシーンのレンダリングや12K動画編集、4K AI動画生成、さらには1200億パラメーター規模の大規模言語モデル(LLM)のローカル実行まで想定している。
チップはMediaTekとの共同設計で、6144基のCUDAコア、20コアのGrace CPU、最大128GBのメモリーを搭載する。AI性能は最大1PFLOPS(※)に達するとされ、従来のノートPC向けプロセッサーを大きく上回る処理能力を掲げる。
搭載予定機種にはMicrosoft Surface Laptop Ultra、Dell XPS 16、ASUS ProArt P14・P16、HP Omnibookシリーズ、Lenovo Yoga Pro 9n、MSI Prestige N16 Flip AIなどが含まれる。価格は現時点で公表されておらず、出荷開始が近づく今後の発表が注目される。
※PFLOPS:1秒間に1000兆回規模の演算を実行できる性能指標。AIやスーパーコンピューターの性能比較で用いられる。
AI PC市場拡大の起爆剤となるか
RTX Sparkの投入は、AI処理をクラウド中心からローカル中心へ移行させる流れを後押しする可能性がある。企業ユーザーにとっては機密データを外部サーバーへ送信せずにAIを活用できるメリットがあり、開発者やクリエイターにとっても高速な処理環境を持ち運べる価値は大きい。
一方で、発表された性能を実際のバッテリー駆動環境でどこまで維持できるかは未知数だ。NVIDIAは終日利用可能なバッテリー性能をうたうものの、4K AI動画生成や大規模モデルの推論処理は消費電力が大きく、実運用では用途によって差が生じると考えられる。
また、RTX SparkはQualcommのSnapdragon Xシリーズに続くWindows on Arm陣営の有力選択肢となる。これまでArm版Windowsは省電力性が強みだったが、今後はAI性能そのものが競争軸になる可能性が高い。Microsoftが推進するAIエージェントやCopilot関連機能との連携が進めば、PCは単なる作業端末から個人専属のAIアシスタントへと進化していくことになる。
NVIDIAは今後、さまざまな価格帯でSparkシリーズを展開する方針を示している。
生成AIの利用が一般業務にも広がる中、高性能AIをローカルで扱える環境が普及すれば、AI PC市場の主導権争いは新たな局面を迎えると言えそうだ。