2026年4月24日、NGK株式会社は石川県能美市に半導体製造装置向けセラミックスの新工場を建設すると発表した。総投資額は約700億円で、2029年10月の量産開始を予定する。生成AIやデータセンター需要の拡大で半導体市場の成長が続くなか、生産能力の増強と供給網の強靭化を同時に進める大型投資として注目される。
生成AI需要を背景に石川へ新工場
NGKは石川県能美市に半導体製造装置用セラミックスの新たな生産拠点を設立する。取得する土地は約10万4000平方メートルで、同社の自動車関連製品工場に隣接した立地となる。生産はグループ会社のNGKセラミックデバイスが担い、2029年10月から量産を開始する計画だ。
新工場で製造するのは、半導体製造装置内でシリコンウエハーを支えるサセプター(※)である。高温の腐食性ガスやプラズマ環境にさらされる工程で使用される重要部品であり、耐熱性や耐食性に優れたセラミックス技術が求められる。これらの性能は半導体製造の歩留り向上や生産効率改善に直結するため、先端半導体の競争力を支える基盤技術の一つと位置付けられている。
昨今、生成AIの普及やデータセンター建設の加速に伴い、半導体メーカーによる先端ロジックや先端メモリーへの投資は拡大を続けている。こうした市場環境を受け、NGKは新工場稼働後に半導体製造装置用セラミックスの生産能力を約20%引き上げる方針を示した。
※サセプター:半導体製造装置内でシリコンウエハーを支持・加熱するための部品。高温や腐食性ガスに耐える性能が求められ、先端半導体の製造品質を左右する重要部材。
供給網分散で半導体投資競争に備える
今回の投資は単なる増産対応にとどまらない。現在、NGKの半導体製造装置用セラミックスの生産拠点は東海地方に集中しており、自然災害や大規模障害が発生した場合の供給リスクが課題となっていた。石川県への新拠点設立はBCP(事業継続計画)の観点からも重要な意味を持つ。
近年は世界各国で半導体の安定供給が経済安全保障上の課題となっている。日本でも政府主導で半導体産業への支援が進み、国内外の企業による工場建設や設備投資が相次ぐ状況だ。そのなかで製造装置や関連部材の供給能力確保は、半導体エコシステム全体の競争力を左右する要素になりつつある。
一方で、半導体市場は景気変動の影響を受けやすい産業でもある。生成AI需要が中長期的な成長を支えると期待されるものの、市況悪化や設備投資の減速が起きれば需要予測が変化する可能性も否定できない。700億円規模の大型投資だけに、市場成長が計画通り続くかどうかが収益性を左右することになる。
それでも、AI時代のデジタルインフラ拡大を見据えた今回の決断は、NGKが掲げる事業構造転換の象徴的な一手と言える。
半導体関連事業を成長の中核に据える同社にとって、新工場は次世代のデジタル社会を支える重要拠点となる可能性が高い。