博報堂、「Branded AI Agent」開発 企業ブランドを“人格化”するAI

2025年11月25日、博報堂はブランドコミュニケーション支援ソリューション「Branded AI Agent」を発表した。企業ブランドに“人格”を与えてAI化し、一貫した対話体験を提供する取り組みで、生活者との関係構築を強化する狙いがある。
博報堂、ブランド人格をAI化する新エージェントを発表
博報堂は、企業ブランドの価値観や思想をAIに組み込み、生活者との対話をブランドらしく最適化する「Branded AI Agent」を開発した。
従来の問い合わせ対応とは異なり、ブランド独自の体験をクリエイティブな対話に落とし込める点が特徴とされる。
開発には博報堂DYグループ横断のAI専門家集団「HCAI Professionals」が参加し、生活者発想とブランディングの知見を統合した。
同ソリューションでは、ブランドを動的な“人格”として捉えるアプローチを採用し、対話を通じて生活者に新たな気づきを提供する。
生活者接点が多様化し常時接続が前提となっている近年、ブランドの一貫性を維持することや生活者と深い関係性を構築することは企業にとって困難になっていた。博報堂はこの問題を解決するソリューションとして本ツールを提供する。
また同時に、生成AIの普及により情報表現が似通い、ブランドの個性が埋もれてしまう懸念も顕在化していた。こうした背景を踏まえ、博報堂は自社文化を表現するAIエージェント群「tsubuchigAI(つぶちがい)」のプロトタイプも披露し、ブランドAIの将来的な活用像を示した。
ブランドAIがもたらす効用と懸念 差別化競争の新段階へ
ブランド人格をAI化する意義は大きいと言える。まず、生活者との接点が24時間化する中で、人手に依存せずブランド世界観を維持できる点は、企業にとって明確なメリットになるだろう。AIエージェントがブランド特有の言語で応答し続ければ、ユーザーは一貫した体験を蓄積し、理解や愛着の深化が促進されると考えられる。
購買行動やロイヤルティ向上への寄与も期待できる領域だ。
一方、リスクも存在する。AIの誤生成がブランドイメージを損なう可能性は常にあり、応答品質のガバナンス体制が不可欠になる。
また、ブランド“人格”を固定しすぎれば、市場環境や生活者価値観の変化に応じた柔軟なアップデートが難しくなる恐れもある。
対話パターンが過度に機械的になれば逆効果になる懸念も拭えない。
今後は、企業がブランドAIをどこまで業務プロセスや顧客体験に組み込むかが分岐点になるだろう。全接点にAIを配置する設計は必ずしも最適ではなく、リアル接点や人の応対との役割分担が新たな競争要因となりそうだ。
生成AIが一般化した今、ブランドAIは差別化の最前線に位置づけられつつあり、企業の個性設計力がより問われる時代に入ったと言える。
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