マイクロソフト、英エヌスケールと提携 新AIデータセンターで演算力強化

2025年10月15日、英新興企業エヌスケールは、米マイクロソフトと提携し、テキサス州でAI(人工知能)専用データセンターを建設すると発表した。
両社による協業は過去2カ月で4件目となる。
AI特化の巨大拠点を建設、マイクロソフトが世界展開を加速
エヌスケールによると、新施設の最大電力供給能力は240メガワットに達し、2026年7〜9月期の稼働を予定している。AI向けの新型半導体「GB300」を約10万4000基導入する計画だ。
マイクロソフトが同社をパートナーに選ぶ背景には、自社データセンター(※)のキャパシティ不足がある。
マイクロソフトは、ノルウェー・英国・ポルトガルでもエヌスケールとの提携を進めており、特にノルウェーでは62億ドル(約9400億円)規模の契約を締結した。
※データセンター:サーバー群を収容し、AIやクラウド処理を行う中核設備。電力供給や冷却効率が性能を左右する。
演算力確保が狙いか、供給リスク分散と環境負荷が課題に
マイクロソフトがエヌスケールとの協業を重ねる背景には、AIモデルの開発競争が激化する中で、演算力(コンピューティングリソース)の逼迫が深刻化している現状があると考えられる。
今後は欧州・北米を中心に、マイクロソフトのAIインフラ網が急速に拡張される可能性もありそうだ。
今回の取り組みは、AIの開発スピードを維持する上で大きなメリットとなるだろう。
特に大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIでは、膨大な電力と計算資源を要するため、地域ごとに最適化されたデータセンター網の構築は競争力に直結し得る。
一方で、環境面の負荷は無視できない課題となるだろう。
AIデータセンターは高い電力消費を伴うため、再生可能エネルギーの活用や廃熱再利用など、持続可能性を担保する技術的工夫が不可欠となる。特にテキサス州では電力網の不安定さが過去に問題化しているため、AI需要の増加が地域エネルギー政策に影響を与える可能性もある。
長期的には、マイクロソフトがエヌスケールのような新興勢力と連携を深めることで、AI産業のインフラ構造そのものが変化していくとみられる。
クラウド事業の“次の競争軸”は、ソフトウェアではなく、演算力をめぐる物理的な資源争奪に移るかもしれない。











