国際金融当局、AI監視を強化へ 同一モデル依存が新たな市場リスクに

2025年10月10日、ロイターの報道によると、国際的な金融規制当局が人工知能(AI)の急速な普及を受け、監視体制を強化する方針を示した。金融安定理事会(FSB)と国際決済銀行(BIS)が相次いで報告書を公表し、AIの集中利用が市場の安定を脅かす可能性に警鐘を鳴らした。
FSBとBISがAIの集中利用に懸念 金融市場全体の連鎖リスクを指摘
FSBは10日に公表した報告書で、金融機関のAI活用が広がるなか、特定のモデルやハードウエアに依存する構造が「群集行動」につながりかねないと指摘した。「過度な依存は、代替手段が少ない場合に脆弱性を生み出す恐れがある」としている。
FSBはAIが市場ストレスを増幅させる可能性を認めつつも、現時点で「AIが引き起こす市場の相関関係が市場の結果に影響を与えている実証的な証拠はほとんどない」とした。
つまり、今後の技術進展次第ではリスクが顕在化する可能性があるとみているのだろう。
また、AIがもたらす効率化の裏で、サイバー攻撃や詐欺といった新たな脅威も増大しているとの認識を示した。
BISは別の報告書で、中銀、金融規制当局、監督当局がAIへの対応力を一層高める必要があると主張。「技術進歩の影響を十分理解した上で監視する機関として、また、技術そのものを利用する機関として、能力を向上させる必要がある」としている。
欧州連合(EU)では、すでにAIを含むデジタルリスクに対応する「デジタル・オペレーショナル・レジリエンス法(DORA)」が2025年1月に施行。
国際的にも、金融分野でのAI利用を安全に進めるための法整備が本格化している。
AI金融化の進展で問われる透明性 効率化と統制のはざまで揺れる
AIの導入は金融機関の業務効率を高め、リスク予測の精度を向上させる一方で、判断過程の不透明さや過信によるリスクを生み出す可能性がある。特に、大規模言語モデルの出力結果は、開発者自身も完全に説明できないケースがあり、誤用すれば市場混乱につながりかねない。
メリットとしては、AIが金融取引の最適化や不正検知に寄与し、人間では分析しきれないデータの洞察を可能にしている点が挙げられる。
しかしその裏で、モデルの偏りやデータ品質の問題が顕在化すれば、同じアルゴリズムを採用する多数の機関が一斉に誤判断するリスクも否定できない。
今後の焦点は、AIの透明性と説明責任をいかに制度化するかにあると言える。各国の規制当局が共通基準を整備できなければ、金融市場の分断や競争環境の不均衡を招く恐れがある。
AIがもたらす新たな金融秩序において、効率と統制のバランスを取ることが最大の課題となるだろう。



	







