グーグル、AIとYouTube・マップ統合を主張 司法省は独占強化の懸念示す

2025年10月8日、米ワシントン連邦地裁で開かれた反トラスト法訴訟の審理で、米グーグルが対話型AI「Gemini」と自社サービスの統合を正当化する姿勢を示した。
米司法省は市場支配の拡大につながると反発しているが、最終判断が下される見通しはまだ立っていない状況だ。
グーグル、「Gemini」統合の正当性を主張 司法省はAI分野への制約拡大を検討
米司法省がグーグルに対して進めている反トラスト法(※)訴訟で、同社は8日の審理において、対話型AI「Gemini」と地図アプリ「Googleマップ」、動画共有サービス「YouTube」を組み合わせて提供することの正当性を主張した。
グーグルのジョン・シュミットライン弁護士は、AI市場はまだ発展段階にあり、同社がこれらのサービスを統合して提供することは競争の妨げにならないと説明。
さらに「グーグルがこれまでに独占的な立場や市場支配力を得たという認識はない」と主張した。
訴訟を担当するアミット・メータ判事は、グーグルが検索および検索広告市場を支配していると認定済みであり、現在は是正措置の策定を進めている。
司法省はその範囲をAI事業にも拡大するよう求め、Geminiを検索エンジンや「Chrome」「Google Play」などと同様に規制対象に含めるべきだと主張している。
一方グーグル側は、マイクロソフトがAI「Copilot」を「Office」に組み込んでいる例を挙げ、他社と同様の手法を使うことを禁止すべきではないと反論した。
だがメータ判事は、端末メーカーがYouTubeやマップを利用するためにGeminiを受け入れざるを得ない状況になる懸念を示し、市場での影響力行使を問題視した。
※反トラスト法:米国の独占禁止法。企業の市場支配や競争制限行為を禁止し、公正な市場を保つことを目的とする。
AI統合がもたらす利便性と独占リスク 判断次第で業界構図が一変も
グーグルが目指す「Gemini」と既存サービスの統合は、ユーザーにとって一体的で便利な利用体験をもたらす可能性がある。たとえば、地図上での移動案内と動画検索、生成AIによる説明を一括して行えるようになれば、情報取得の効率は格段に高まるだろう。
AIが生活インフラとして機能する未来を見据えれば、この戦略は自然な流れとも言える。
しかし今回議論されたように、こうした統合は市場支配の固定化につながる懸念も拭えない。
YouTubeやマップはすでに高いシェアを持つため、Geminiがそれらに標準搭載されれば、競合AIは参入の余地を失いかねない。AI市場はまだ黎明期にあるため、初期段階での支配的設計がその後の競争構造を左右するリスクもある。
米国ではマイクロソフトやOpenAI、アマゾンもAIを中核とした製品連携を強化しているため、司法省の判断は業界全体の方向性に影響を及ぼす可能性が高い。
メータ判事の決定次第では、グーグルのAI戦略が大幅に制約される一方、他社にとって新たな競争機会が生まれる展開もあり得る。
AIと独占禁止の線引きが、テック産業の新たな試金石となりそうだ。











