AI導入、現時点で雇用喪失は限定的 NY連銀が調査結果公表

2025年9月4日、米連邦準備理事会(FRB)のニューヨーク地区連銀(NY連銀)は、企業における人工知能(AI)導入が進む一方、現時点で大規模な雇用減少は確認されていないと発表した。調査結果はAI活用の実態と、雇用への影響の現状を明らかにしている。
NY連銀、AI活用拡大も雇用影響は軽微と発表
NY連銀のエコノミストはブログにて、企業のAI導入状況と雇用への影響に関する調査結果を公表した。それによれば、過去1年間にサービス業では40%がAIを活用し、工場経営者によるAI利用は26%にのぼり、いずれも前年から顕著に増加しているという。
その中で、「企業は過去1年間にAI利用が顕著に増加したと報告したが、AIによる解雇を報告した企業はほとんどなかった」と主張し、「実際、すでに雇用された人々にとって、AIは雇用喪失よりも再教育につながる可能性が高いことを調査結果は示している」と分析している。
また、現時点では雇用への影響は緩やかであるが、将来も同じ状況ではない可能性もあると指摘している。連銀の調査担当者は「今後、企業はAIを業務へ統合していく中で、より大幅なレイオフや採用縮小を予想している」との見通しを示したという。
将来的な雇用シフトと人材再教育の加速は不可避
今回の調査は、AIの普及が即座に大規模な解雇を引き起こしているわけではないことを裏付けたが、長期的な展望は一筋縄ではいかない。特にホワイトカラーや専門職では、AIによる一部業務の代替が進むと予測され、従来型の採用枠が縮小するリスクが残る。
一方で、デジタルスキルやデータ活用能力の習得を支援する再教育需要は今後さらに高まるとみられる。
企業にとっては、AI活用による効率化と人材確保の両立が成長戦略の鍵になる。過度な自動化に依存すれば一時的なコスト削減は可能だが、イノベーションの停滞や優秀な人材の流出を招く恐れがある。
一方、再教育やスキル転換を前提にAIを導入することで、生産性向上と人材価値の維持を両立できる可能性がある。
政策当局も、この変化を見据えた職業訓練・教育制度の強化を急ぐ必要があるだろう。