オラクル、自社クラウドにグーグルAI「ジェミニ」導入へ

2025年8月14日、米オラクルとグーグルの親会社アルファベットは、生成AI「Gemini(ジェミニ)」をオラクルのクラウドサービスや企業向けアプリで提供する合意を結んだと発表した。両社はAI分野での協業を拡大し、開発者と企業利用の双方に新たな選択肢を広げることになる。
オラクル、クラウドと業務アプリにグーグル「ジェミニ」導入
オラクルは、グーグルの生成AIモデル「ジェミニ」を自社クラウドおよび業務アプリに組み込むことで合意した。契約内容により、ソフトウエア開発者はクラウド経由で文章、動画、画像、音声などの生成を可能にし、企業ユーザーは財務・人事・サプライチェーン管理といったアプリケーション内でジェミニを直接活用できる。
今回の提携は、6月にオラクルがイーロン・マスク氏率いるxAIと結んだ協業に近い枠組みであり、自社技術だけに依存せず複数のAIを並列的に提供する同社の戦略を補強するものだ。
技術面では、オラクルがグーグルの機械学習基盤「バーテックスAI(※)」を商品に統合し、利用者はそこを経由してジェミニへ接続する。モデルそのものはグーグルのサーバー上で稼働する仕組みである。
グーグル側にとっても、マイクロソフトやアマゾンとのクラウド競争が激化する中で企業顧客を獲得することができる。オラクルとの提携を通じて顧客基盤を拡大し、AI市場における存在感をさらに高めたい局面だといえる。
※バーテックスAI:グーグルが提供する機械学習・生成AI開発基盤。学習、評価、展開までを一括管理できるサービス。
AI連携拡大が生む効率化と依存リスク、クラウド競争の行方
オラクルとグーグルの合意は、企業にとって業務効率化の好機である。既存のオラクルアプリを利用する企業は追加投資をせずに高度なAI機能を享受でき、開発者にとっても複数のAIを選択的に利用できる環境が整う。
これにより、生産性や意思決定の質を向上させる可能性が高いといえる。
しかし、他社AI基盤に依存することで価格体系や性能面がグーグル側に左右されるリスクも存在する。特定のモデルやクラウドに深く組み込むことで、将来的な切り替えの柔軟性が損なわれる懸念は拭えない。利用者にとっては利便性と引き換えにロックイン効果が強まる構図となる。
クラウド市場の競争は今後さらに加速する。マイクロソフトが「Azure OpenAI」で優位を築き、アマゾンが独自基盤「Bedrock」を展開する中、オラクルとグーグルの協業は差別化の一手となるだろう。
複数のAIを統合的に活用できるかどうかが顧客獲得の鍵となり、クラウド選定の基準が「性能」から「柔軟性」へと移行するとみられる。