マスク氏のxAI、アップルに対し法的措置を取る方針 アプリ順位操作を主張

2025年8月11日、米実業家イーロン・マスク氏は、自身が率いる人工知能スタートアップ「xAI」が米アップルに法的措置を取る方針を表明した。アプリ配信市場「App Store」のランキング操作が反トラスト法(独占禁止法)に違反していると主張している。
xAI、アップルのアプリ順位操作を批判し法的措置へ
マスク氏は同日、SNS「X」において「アップルはオープンAI以外のAI企業がApp Storeで1位になることを不可能にしている。明白な独占禁止法違反だ。xAIは即時、法的措置を取る」と投稿した。
具体的な証拠は提示されなかったが、強い言葉でアップルを非難した格好である。
現在、米国のiPhone向け「無料アプリ」部門ランキングでは、オープンAIの「ChatGPT」が首位を占め、xAIのチャットアプリ「Grok」は5位、グーグルの「Gemini」は57位に位置する。
アップルは今年、オープンAIとのパートナーシップを発表し、ChatGPTをiPhoneやiPad、Macに統合している。
米国では近年、巨大IT企業の市場支配力を巡る反トラスト法(※)訴訟が相次いでおり、今回の動きもその延長線上に位置づけられる。
※反トラスト法:米国において企業間の競争を阻害する独占的行為を禁止する法律。日本の独占禁止法に相当する。
AIアプリ市場の公正性論争、規制強化や競争促進の契機に
今回の動きは、AIアプリ市場の競争環境に関する議論を一段と活発化させる可能性がある。App Storeのランキングはユーザー流入や収益に直結するため、表示順位の決定基準が不透明であれば、特定企業が優遇される構造への批判は避けられない。
一方で、プラットフォーム運営側にはセキュリティ確保やユーザー体験向上の観点から、アルゴリズム管理の自由度を維持する必要性がある。過度な規制は技術革新のスピードを鈍化させ、サービス品質を損なう恐れも否定できない。
提訴に発展すれば、他のAI企業やアプリ開発者が同様の主張を行う動きも出る可能性が考えられる。その場合、米議会や規制機関がアプリ市場の公正性を巡る法整備や監視体制を強化し、結果として競争促進と市場透明性の向上が進む一方、プラットフォーム運営の制約拡大という副作用も伴うと考えられる。
どこにバランスを置くのかが焦点となるが、明確な基準の線引きが難しい問題なだけに対策には時間がかかりそうだ。