サムスン、テスラと約2.4兆円AI半導体契約 米ファウンドリーで量産へ

2025年7月28日、韓国のサムスン電子は日本円にして約2兆4370億円規模の半導体受託生産契約を発表した。契約は8年以上にわたる長期案件で、米国テキサス州の新工場でのAI半導体量産が本格化する見通しだ。
サムスン、AI特化の長期ファウンドリー契約を締結
サムスン電子は7月28日、グローバル企業との間で計22兆7648億ウォン(約2兆4370億円)規模の半導体ファウンドリー(※)契約を締結したと発表した。契約期間は2025年7月24日から2033年末までで、単一の取引先としては同社半導体部門で過去最大の契約となる。
具体的な契約先や製品の詳細は当初非公開とされていたが、続報により、「テスラ社」との契約であり、「AI6」と呼ばれる次世代半導体を、来年稼働予定の米テキサス州の新工場で量産することが明らかになった。
今回の契約額は2024年のサムスン全体売上高(300兆8709億ウォン)の約7.6%に相当し、特に赤字が続いていたファウンドリー事業にとっては反転の起爆剤となりうる。
2025年4〜6月期の営業利益は全体で4兆6000億ウォンだったものの、半導体部門は1兆ウォン未満にとどまっていると推定されている。
業界関係者によれば、同社が抱えていた製造歩留まり(良品率)の課題が一定程度改善したことにより、今回の大規模契約成立につながったとのことだ。
※ファウンドリー:半導体設計を他社が行い、製造のみを請け負う受託生産ビジネスモデル。設計を持たない「ファブレス企業」との連携で業界が成り立つ。
AI需要追い風に成長加速も、技術・競争の壁は残る
今回の大型契約は、AI特化型チップ市場の拡大という追い風を受け、サムスンがグローバルファウンドリー市場で巻き返しを図る構図を鮮明にしたと言える。
さらに、米国内に生産拠点を構えることで、地政学リスクや輸出規制への対応力も高まると期待される。
とりわけ、エヌビディアなど米AI企業は先端チップの安定供給を重視しており、信頼性の高い生産体制を確保したファウンドリー企業の価値は上昇している。今回の契約は、そうした市場ニーズに応えた成果といえる。
一方で、サムスンが競合のTSMCに比べて顧客基盤やプロセス技術面での課題を抱えている点は懸念点だ。
AI向けチップは5ナノ以下の極小プロセスでの製造が求められ、量産体制の安定性や電力効率、熱設計などの技術的壁が依然として高い。
また、量産体制がまだ完全に確立していない点もリスク要因となるだろう。契約が長期に及ぶとはいえ、途中での仕様変更や収益変動リスクも否定できない。
今後の焦点は、米工場の稼働進捗と歩留まりのさらなる改善にあると考えられる。
安定した納品実績が蓄積されれば、追加受注や他社からの乗り換えも見込めるだろう。
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