損保ジャパン、生成AI「おしそんLLM」導入 照会回答業務を4割削減

2025年7月18日、損害保険ジャパン(損保ジャパン)は生成AIを活用した照会回答支援システム「おしそんLLM」の利用を開始した。大規模言語モデル(LLM)による自動回答案の生成で、営業店の業務負荷軽減を狙う。
損保ジャパン、照会対応AIの全国導入で4割の時間削減
損保ジャパンは、代理店・営業店・本社間で行われる年間67万件規模の照会対応業務を効率化するため、生成AI搭載システム「おしそんLLM(※)」を全国の営業拠点で本格稼働させる。2023年に開発を開始し、2024年度の試験運用では回答可能な照会に対し業務時間を約4割削減する効果が確認されていた。
このシステムは、膨大な社内マニュアルやQ&Aデータを学習し、最適な回答案を自動生成する仕組みである。生成結果と参照元資料を併せて表示することで、回答者が精度を確認しながら迅速に回答を作成できる。誤情報生成(ハルシネーション)を防ぐため、参照データの可視化や改善ログを反映させる設計も特徴だ。
従来は「教えて!SOMPO」と呼ばれるナレッジ検索システムを利用していたが、検索だけでは解決できないケースが多く、追加照会が頻発していた。従来システムの課題点を克服した「おしそんLLM」の導入により、現場担当者はより短時間で高精度な回答を提示できるようになり、営業活動への集中度が高まると期待されている。
※LLM(大規模言語モデル):膨大なテキストデータを学習し、人間に近い自然な文章を生成・理解できるAIモデルの総称。生成AIの中核技術として利用される。
生成AIが変える業務構造 精度と責任の両立が課題
生成AIによる業務効率化は、現場の生産性向上や応答スピードの加速といった明確なメリットをもたらすと言える。
一方で、AIが提示する回答案が完全に正確であるとは限らず、誤情報が顧客対応に反映されるリスクを有する点は依然として課題だ。
損保ジャパンは人間の最終チェックを必須とする運用設計を採用し、「安全性の担保」と「効率化」の両立を図っている。
今後は、照会業務だけでなく、顧客向けFAQや契約関連の問い合わせ対応、さらには社内マニュアル整備の自動化にも応用が見込まれるだろう。生成AIの特性を活かし、学習データの継続的な拡張とモデル改善が進めば、さらに高い回答精度を実現する可能性を秘めている。
AIの導入は一辺倒にメリットだけがあるのではなく、コスト削減効果と同時に新たなシステム運用・検証コストを生む点も無視できない。今後は保険業界全体で生成AIの活用競争が加速し、精度・透明性・責任範囲の確立が成否を分けると考えられる。
損保ジャパンの挑戦は、金融・保険業界の業務改革モデルとして注目されるだろう。