NXワンビシ、WAN-SignのAI機能強化 Azure OpenAIで精度95.4%に

2025年7月15日、株式会社NXワンビシアーカイブズは、電子契約・契約管理サービス「WAN-Sign」に搭載するAI契約書管理機能をバージョンアップしたと発表した。米マイクロソフトのAzure OpenAIを採用し、抽出精度が大幅に向上したという。
AIエンジン刷新で契約書情報の抽出精度が95.4%に
NXワンビシアーカイブズは、電子契約と書面契約の双方を一元管理できる「WAN-Sign」において、AI契約書管理機能の強化を行った。この機能は、契約書のPDFファイルをAIが読み取り、自動的に文書情報を抽出・登録するもので、入力業務の負担軽減や文書の統合管理に貢献している。
今回のアップデートでは、従来のAIエンジンからAzure OpenAI(GPT)へと基盤を変更。これにより、文書情報の抽出精度が従来の86.5%から95.4%へと向上した。精度の向上に加え、処理時間の短縮も実現されており、業務の効率化がさらに進む見込みだ。
抽出可能な項目には、「相手方の名称」「契約金額」「契約日」「契約満了日」「自動更新の有無」「更新期間」「解約期限」が含まれており、電子帳簿保存法(※)に基づく検索要件にも対応している。
なお、このAI契約書管理機能は、WAN-Signの「文書電子データ管理料 大容量プラン」を契約しているユーザーであれば、追加料金なしで利用可能である。
※電子帳簿保存法:国税関係書類の電子保存やスキャナ保存を認める法律。検索性や改ざん防止の要件を満たすことが義務づけられている。
業務効率化と法令対応が進展 企業のAI導入促進も
今回の機能強化は、企業にとって契約書管理の質とスピードを同時に高める追い風となりうる。契約文書に関わる作業は多くの企業で時間と手間を要してきたが、AIによる高精度かつ自動的な情報抽出は、法務部門やバックオフィスの業務負荷を大きく軽減する手助けになると考えられる。
さらに、電子帳簿保存法の検索要件に対応した構造で情報を抽出できる点も重要だ。電子保存に関する規制対応や監査対応を進めるうえで、こうした機能は企業にとって不可欠な要素なだけに、導入のメリットは大きいだろう。
今後は、文書の分類・抽出にとどまらず、契約リスクの検知や条文の比較・推奨修正といった高度な判断領域にもAIが浸透していく可能性がある。
また、こうした機能が低コストで提供されている点から、中小企業にも普及しやすく、国内全体でAI文書処理の一般化が進むこともあり得る。
ただし、AIの判断力に全面的に依存する運用はリスクも伴う。AIによる処理と人間による最終確認を組み合わせた「協調型運用」が、当面の主流となるだろう。
また、制度的にもAI処理結果の信頼性や監査証跡の確保が課題となると思われるため、今後はガイドライン整備や法的枠組みの再構築も同時に進める必要がありそうだ。
Azure OpenAIを活用した高精度な抽出機能の導入は、企業のAI活用を後押しする象徴的な事例といえる。今後、文書処理や契約業務におけるAI導入がより一般化すれば、法務領域におけるデジタル化はさらに加速していくと見られる。