2026年10月15日、国内のディー・エヌ・エー(DeNA)は、大学受験生向けの数学記述添削AIアプリ「SIRUS(シルス)」の本格提供を開始した。手書き答案を撮影するだけで30秒以内に部分点まで採点し、志望校合格に向けた学習計画と問題演習を個別に提案する。
数学の記述答案を採点し、毎日の演習問題も推薦
SIRUSの特徴は、単に正誤を判定するのではなく、答案の途中式を読み取り、部分点を含めて評価する点にある。採点結果は「方針」「論証」「計算」の3観点で示され、解答の方向性を考える力、採点者に論理を伝える力、計算を正確にやり切る力について、それぞれフィードバックを受けられる。
さらに、志望大学の合格に必要な学力水準と、これまでの答案データから分析した現在の実力との差を踏まえ、毎日取り組むべき3問を推薦する。問題は大学入試の分析に基づいて作成した約3,000問のオリジナル問題から選ばれる仕組みだ。追加演習向けの「演習プラス」や、苦手分野を集中的に学べる「分野別トレーニング」も用意している。
学習状況の可視化も重要な機能となる。分野ごとの実力と志望校合格に必要な水準をレーダーチャートで表示し、入試本番までの期間から逆算して、各分野で習得すべき内容や目標レベルを提示する。これにより、受験生は目の前の問題を解くだけでなく、合格までの道筋を意識しながら学習を進められる。
開発の背景には、記述答案を客観的に評価してもらう機会の少なさがある。志望校に応じた添削指導を受けられる環境は、居住地域や家庭の経済状況によって異なるのが実情だ。
DeNAは2025年11月の開発初期から100名以上の受験生に試作版を利用してもらい、反応を確かめながら改善を重ねてきた。社員の企画提案から事業化した新規事業の一つとして、AIによる個別指導の提供を目指す。
AIが受験指導の地域格差を縮小へ 採点精度の検証も課題
SIRUSが目指すのは、従来は講師や予備校の指導に頼る部分が大きかった記述対策を、日常的に取り組める学習環境へと変えることだ。短時間で採点結果と改善点を確認できれば、添削を受けるまで次の学習に進めない状況を減らし、演習と振り返りのサイクルを速められる可能性がある。特に、近隣に大手予備校がない地域の受験生にとって、学習を支える選択肢が増える意義は大きい。
また、答案データに基づいて苦手分野や実力との差を把握し、取り組む問題を絞り込めることは、限られた受験勉強の時間を有効に使ううえでも利点となる。学習計画の立案や進捗管理に不慣れな高校生に対し、AIが次の行動を具体的に示すことで、自律的な学習を後押しする効果も期待できる。
一方、AIによる採点やフィードバックが、大学入試の実際の採点基準や採点者の判断とどの程度一致するかは重要な論点である。部分点の判定や論証の評価に誤りがあれば、受験生が実力を過大評価したり、誤った学習方針を選んだりするおそれもある。サービスを活用する際には、AIの評価だけを絶対視せず、模範解答や学校・塾の指導と照らし合わせる姿勢も必要になる。
DeNAは今後、収録問題の拡充に加え、数学以外の教科への展開や、学校・地方の学習塾で教材として活用することも検討している。将来的には大学受験にとどまらず、一人ひとりに合わせた学びを届ける教育サービスへの発展を目指す。
SIRUSの普及が学習機会の格差縮小につながるかは、採点の信頼性や継続的な学習効果をどこまで高められるかに左右されるだろう。