2026年10月8日、国内のソフトバンクグループ(SBG)は、東南アジアの配車・デジタルサービス大手Grab、マレーシアのエネルギー企業PETROSと、同国サラワク州でAI・デジタルインフラのプラットフォーム開発に向けた基本合意書を締結した。3社は段階的な開発計画を検討し、AI産業の拠点形成を目指す。
SBG・Grab・PETROSがAIインフラ開発で連携
今回の基本合意は、サラワク州におけるAIおよびデジタルインフラのプラットフォーム構築に向け、3社が協力して開発のロードマップを検討するものだ。現時点で具体的な事業計画の実施が確定したわけではなく、各社は幅広い分野で事業化の可能性を探る段階にある。
検討対象には、AIコンピューティングやAIサービス、先端テクノロジー、ロボティクスに加え、地域の人材育成やコミュニティの発展も含まれる。単に計算資源を提供する施設を整備するだけでなく、AI関連産業を支える技術や人材、地域経済まで視野に入れた構想といえる。
3社はそれぞれ異なる強みを持ち寄る。SBGはAIインフラ、先端コンピューティング、半導体、フィジカルAIに関する知見と、グローバルな技術・AIエコシステムを生かす。Grabは東南アジアで築いたデジタルプラットフォームやAIの応用力、顧客・パートナーのネットワークを提供する。
PETROSは、サラワク州のエネルギー資源を活用してきた経験を基盤に、エネルギー供給ソリューションや関連インフラの整備、地域企業との連携を担う。こうした役割分担を通じて、3社は州内のサプライチェーンへの地元企業の参画と、地域における価値創出の拡大を目指す。
AI産業の地域拠点化へ 電力確保と事業化が課題に
今回の連携が実現すれば、サラワク州はAIインフラと高付加価値テクノロジー産業の集積地として発展する可能性がある。AIの普及に伴って計算資源や関連サービスへの需要が拡大するなか、インフラ整備と技術、人材育成を一体で進められれば、海外からの戦略的投資を呼び込み、地域の雇用や産業基盤の強化につながることも期待される。
マレーシアにとっても、デジタルインフラと通信接続の拡充を進め、AI分野における地域ハブとしての存在感を高める機会となる。
今回の構想は、サラワク州が「Post COVID-19 Development Strategy 2030」のもとで掲げる高所得州への移行や、マレーシアのデジタル経済・AI政策とも方向性を共有している。州内の企業がサプライチェーンに参加できれば、投資効果を地域経済に波及させる余地も広がるだろう。
一方、構想の実現には複数の課題が残る。最終契約の締結や政府・規制当局の承認、資金調達に加え、適切な土地、競争力のある価格で安定供給される電力、通信接続、十分な顧客需要を確保しなければならない。また、AI技術や市場環境の変化によって、想定した事業規模や収益性が成立しない可能性もある。
特に重要なのは、基本合意を実際の投資や施設整備へつなげられるかという点だろう。本合意書は最終契約の締結や事業実施を義務付けるものではなく、現段階で開発の実行や経済効果が保証されたわけではない。
今後、3社が具体的な計画や投資条件をどこまで詰められるかが、サラワク州のAI拠点化とマレーシアの地域競争力を左右することになると考えられる。