2026年8月31日、国内の伊藤忠商事は、伊藤忠グループ会社と電通グループによるITサービス・リテールメディア(※)領域の戦略的提携を発表した。電通総研の非公開化を通じ、両グループの顧客基盤や業務知見を組み合わせ、AI時代の総合ソリューション提供を目指す。
電通総研を非公開化 CTCとの連携でIT支援を強化
今回の提携では、電通グループの連結子会社である電通総研を対象に公開買付けを実施し、非公開化する予定だ。公開買付け成立後は、伊藤忠商事と子会社のアイエフピーが社員となる合同会社VICと電通グループが協力し、株式併合などを通じて株主を両社に集約する。VICは約38%を保有する株主となる見込みで、手続き完了後、電通総研は上場廃止となる予定である。
狙いの一つが、伊藤忠グループのIT事業基盤との連携だ。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は大規模ITシステムや高度なITインフラの構築・運用・保守に強みを持つ。
一方の電通総研は、製造業向けコンサルティングやシステム開発に加え、金融・コーポレート分野の業務知見とソフトウェア開発力を有する。
両社の業務提携によって、コンサルティングからデータ分析、システム、オペレーションまでを顧客課題に応じて組み合わせる体制を強化する。AIをはじめとするデジタル技術の進化で、企業ごとの業務を踏まえた迅速な設計・実装が求められるなか、構想から運用まで一貫して支援できる点が競争力になりそうだ。
※リテールメディア:小売企業が持つ店舗、アプリ、購買データなどの顧客接点を広告媒体として活用する事業領域。購買実績を生かした広告配信や効果測定などが可能になる。
リテールメディアも融合 購買データ活用を高度化
もう一つの柱がリテールメディア領域である。伊藤忠グループは、ファミペイの3,000万ダウンロード、ファミリーマート11,580店舗で展開する「ファミマTV」、6,000万超のIDに紐付く「Life-Liveデータ」を有し、店舗・メディア・ID・購買データを一体活用できる基盤を構築している。
ここに電通グループの広告・マーケティングの知見と販売力を組み合わせる。データ・ワンとゲート・ワンは電通と業務提携契約を締結し、購買データを起点とした広告・マーケティングの高度化を進める方針だ。広告効果の可視化や顧客理解の深化に加え、新たなサービスや収益機会の創出も狙う。
ITとリテールメディアを別々に強化するのではなく、幅広い顧客基盤、業務知見、データ、広告・マーケティング力を横断的に組み合わせる点が今回の提携の特徴と言える。特にAI活用が企業活動へ広がるなか、データを分析するだけでなく、業務や顧客接点まで含めて実装できる体制は新たな価値につながる可能性がある。
一方、複数企業の機能を組み合わせるほど、事業間の連携やデータ活用をいかに円滑に進めるかが重要になる。
両グループがそれぞれの強みをどこまで融合できるかが、AI新時代の総合ソリューション事業として成長するうえでの焦点となりそうだ。