大阪大学歯学部附属病院は、親知らずの抜歯前評価を支援するAIシステムの運用を開始した。
パノラマレントゲン画像を解析し、歯根と下顎管の接触可能性を三段階で表示する。
2D画像から神経接触を推定
2026年2月3日、大阪大学歯学部付属病院は、親知らずの抜歯難易度をAIで推定する支援システムを近隣歯科と連携して運用開始したと会見で明らかにした。
親知らずの根の先が下顎管(※1)と接触している場合、抜歯後に神経まひが残るリスクが高まる。
2DのX線写真では、歯根の先端と下顎管の位置関係を把握しにくい場合があり、状況に応じてCT(※2)による確認が必要になることがある。
大阪大学歯学部附属病院は、深層学習(YOLO)で症例画像を学習させ、パノラマレントゲン画像から下顎管との接触有無を推定するAIを開発した。
専用アプリにパノラマレントゲン画像をアップロードすると、約30秒で「接触している可能性が高い」「接触していない可能性が高い」「推定不能」の3通りを表示する。
手術難易度の判断材料となり、専門医紹介の可否を検討する参考情報になる。
※1 下顎管:下顎骨内を走行する管状構造で、下歯槽神経が通る。
※2 CT(コンピューター断層撮影):X線を用いて体内の断面画像を取得する検査法。歯科では神経や歯根の立体的位置関係の把握に用いられる。
抜歯リスク可視化の先にある医療DX
本取り組みのメリットは、抜歯リスクの可視化を標準化し、臨床判断のばらつきを抑制できる可能性にある。
下顎管との接触可能性を三段階で示す仕組みが定着すれば、CT撮影の要否判断が効率化され、患者負担の軽減にもつながり得る。
一方で、表示はあくまで推定値であり、診断そのものではない。AI評価が心理的アンカーとなり、最終判断に影響を与える懸念は残る。
学習データの偏在や症例不足があれば、特定条件下で誤判定が生じる可能性も否めない。
説明責任や責任分界が曖昧なまま導入が進めば、トラブル時に信頼低下を招くおそれもある。
今後は症例データの蓄積と外部検証を通じた透明性の確保が鍵となりそうだ。
感度や特異度の公開が進めば、臨床現場での受容は広がる可能性がある。
中長期的にはインプラント計画や嚢胞診断などへの応用も想定され、2D画像AIが一次スクリーニングの基盤として位置づけられる展開も考えられる。
制度設計と倫理整備を伴走させられるかが普及の大きな分かれ目となりそうだ。
大阪大歯学部付属病院 「下顎管と智歯の接触推定AIサービス」
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