イーサリアム財団、新助成モデル発表 戦略的支援で重点投資へ

2025年11月3日、イーサリアム財団(Ethereum Foundation:EF)は、助成制度「エコシステムサポートプログラム(ESP)」の新モデルを発表した。
従来の申請型から、戦略的重点分野に資金を集中させる新体制へと転換する。
反応型から戦略型へ 新助成モデルで重点分野を明確化
イーサリアム財団は、8月に公開助成金の申請受付を一時停止して以降、より効果的な資金配分モデルの再設計を進めてきた。
新たな助成枠組みは、従来の「反応的」な支援から「戦略的・積極的」な支援へと方針を転換するものである。
これまで、少人数のチームが多数の申請処理に追われることで、長期的な機会の追求が難しいという課題を抱えていた。
新モデルでは、EF内部の各チームと緊密に連携し、資金提供がエコシステムの優先課題に沿う形で行われるよう体制を整えた。
新助成制度は「ウィッシュリスト(Wishlist)」と「提案募集(Requests for Proposals:RFP)」の2つから構成される。
ウィッシュリストは、EFが重要とみなすテーマや発展領域を提示し、ビルダーが自由に提案できる形式だ。
一方、RFPは特定の課題に対して明確な成果物やアウトプットを求めるもので、募集期間や条件が定められている。
公式サイトでは、暗号技術、プライバシー、アプリケーションレイヤー、セキュリティ、コミュニティ育成など、すでに複数分野のウィッシュリストとRFPが公開されている。
プロジェクト提案者は、内容がどちらに該当するか不明な場合、ESPチームによる「オフィスアワー」でのフィードバックを受けることも可能だ。
戦略的支援とオープン性の両立が鍵に
イーサリアム財団による新たな助成モデルは、エコシステムの持続的成長を見据えた再設計とみられる。
最大のメリットは、限られた資金をより効果的に活用できる点だろう。
明確に定義された重点分野に投資を集中することで、技術的課題の解決や社会実装のスピードを高め、成果を可視化しやすくなる可能性がある。
こうした方向性は、研究・開発リソースの最適化を通じて、ネットワーク全体の競争力を底上げすると考えられる。
一方で、支援対象を選別する構造は、オープンな開発文化に一定の制約をもたらす懸念もある。
財団の重点領域と異なる分野で活動する開発者や新規参入チームが支援を得にくくなり、結果として多様なアイデアの芽が摘まれるおそれもあるだろう。
また、助成金が「財団主導のプロジェクト」に偏れば、分散型ネットワークの理念との乖離が指摘されるかもしれない。
今後は、財団が「戦略的支援」と「オープンな参加」のバランスをどう取るかが鍵となりそうだ。
重点投資による成果を示しつつ、周縁的プロジェクトにも柔軟な支援策を講じ、全体としての多様性を維持できるかが問われることになりそうだ。
エコシステムの進化を左右するのは、資金の配分そのものよりも、それを通じてどれだけ開かれた創造環境を保てるかにかかっていると言えそうだ。
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