JPYC、IPSとMoU締結 フィリピンでステーブルコイン事業展開へ

2025年10月28日、日本円建てステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社(以下JPYC社)は、通信事業を手がける株式会社アイ・ピー・エス(IPS)および連結子会社のInfiniVAN, Inc.(インフィニバン)と、フィリピンでのステーブルコイン事業に関する基本合意書(MoU)を10月16日に締結したと発表した。
JPYC、IPS・InfiniVANとMoU締結 ペソ建てコイン発行やJPYC流通を検討
JPYC社は10月16日、IPSおよびインフィニバンとステーブルコイン事業に関する業務提携のMoUを締結した。
3社は今後、フィリピンペソ建てのステーブルコイン発行・流通事業、およびJPYCのフィリピン国内での流通に関する共同プロジェクトを検討していく方針を示している。
IPSおよびインフィニバンは、フィリピン全土に通信インフラを展開しており、2023年には国内海底ケーブルネットワーク(PDSCN)を完成させた。
両社は、地方を含む広域で通信インフラを整備しており、今回の提携は通信分野での基盤整備を踏まえた金融領域との連携強化の一環とみられる。
フィリピン中央銀行(BSP)はすでにFinTechおよびVASP(※)を監督する枠組みを整備しており、ステーブルコイン発行を含む新たな金融サービスに向けた制度基盤も整いつつある。
JPYC社は、8月18日付で資金移動業者として登録され、10月27日よりステーブルコイン「JPYC」の発行を開始している。
今回のMoU締結は、こうした国内での事業展開に続く海外連携の動きといえる。
※VASP(Virtual Asset Service Provider):仮想資産サービス提供者のこと。
JPYC提携が拓くアジア決済の新潮流
今回の提携は、アジア圏における越境決済の在り方を大きく変える可能性を秘めている。
メリットとしてまず挙げられるのは、国際送金に伴う高コストと長時間処理の解消だろう。
ブロックチェーンを基盤とするステーブルコインを活用すれば、フィリピンのように海外送金が経済を支える国でも、より安価かつ迅速な送金が実現しうる。
通信インフラを通じて地方の未銀行化層にもアクセスできる点は、金融包摂の推進に向けた新たな突破口となりそうだ。
一方で、課題も少なくない。
ステーブルコインの発行や流通は各国の規制環境に大きく左右され、為替管理やAML/CFT基準の整合といった実務的調整が不可欠だと考えられる。
流動性の確保や換金リスクへの対処も、安定した運用を実現する上で避けて通れないテーマといえる。
今後は、通信と金融を横断するセキュリティ設計、決済事業者・地銀との接続強化、そして政府間協調による制度設計が鍵を握るだろう。
JPYCとIPSの協業が、単なる地域実証にとどまらず、アジア全域におけるデジタル通貨決済の標準モデルへと発展していく可能性がある。
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