シティ、コインベースと協業 機関投資家向けデジタル資産決済基盤を構築へ

2025年10月27日、米金融大手シティ(Citi)は、機関投資家向けのデジタル資産決済機能の構築に向け、米暗号資産取引所コインベース(Coinbase)との協業を発表した。
法定通貨決済の効率化と、ブロックチェーン基盤による次世代金融インフラの整備を目指す。
シティとコインベースが連携 法定通貨入出金の最適化へ
今回の協業は、機関投資家を対象とした新たなデジタル資産決済ネットワークの構築を目的としている。
初期段階では、法定通貨の入出金プロセスに焦点を当て、コインベースのオン・オフランプ機能(※)を活用する。
これにより、シティが提供する決済オーケストレーション基盤を活用し、複数の決済方法との接続を可能にすることで、トランザクションの迅速化や可用性の向上を目指す。
オンチェーン上でのステーブルコインを活用した代替的な決済手段の検討も進めており、今後数カ月以内に具体的な取り組み内容を公表する予定だ。
これが実現すれば、シティとコインベース双方が関与する国際決済ネットワークにおいて、国際的な資金決済の即時性や可用性が高まる可能性がある。
コインベースのCEOブライアン・アームストロング氏は、「もはや議論の余地はない。暗号資産とステーブルコインは、世界の金融システムをアップデートするツールだ」とX(旧Twitter)に投稿し、既存金融との連携が新たな局面を迎えているとの見方を示した。
※オン・オフランプ機能:法定通貨と暗号資産を相互に変換する仕組み。
暗号資産取引所を介して法定通貨をブロックチェーン上の資産に交換することを指す。
ステーブルコイン活用が加速か 金融インフラ再構築への布石
今回の提携は、伝統的な金融機関が暗号資産エコシステムと連携する象徴的な事例といえる。
シティはすでに、2026年内を目標に暗号資産およびステーブルコインのカストディ(保管)サービスを開始する計画を進めており、今回の協業はその基盤整備の一環とみられる。
メリットとしては、機関投資家が抱える資金決済の煩雑さやクロスボーダー取引のコストが削減されていく可能性がある。
オンチェーン上での資産移転が一般化すれば、決済の即時化やトレーサビリティの確保など、効率と透明性の両立が進むだろう。
一方で、各国の規制対応やAML(マネーロンダリング防止)基準の整合性といった課題も残る。
とりわけ、ステーブルコインの裏付け資産や発行主体に対する信頼性確保が不可欠であり、シティのような大手金融機関がそのリスク管理モデルをどのように設計するかが焦点となりそうだ。
今後、デジタル資産決済は「金融の裏方」から「基幹インフラ」へと変化していく可能性が高い。
シティとコインベースの連携は、国際金融における“新しい決済標準”を形作る試金石となるだろう。
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