FRONTEO×Meiji Seika ファルマ、AI創薬で既存薬の新適応探索へ

2025年10月23日、Meiji SeikaファルマとFRONTEOが、AIを活用したドラッグリポジショニングに関する共同プロジェクトを開始した。
FRONTEOの創薬支援AI「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を用い、既存薬の新たな適応症候補を体系的に発見することを目指す。
FRONTEOのAI創薬基盤を活用、未知の疾患関連を発見へ
両社が着手したプロジェクトは、FRONTEOが開発したAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」を中核に据える。
DDAIFは、自然言語処理技術「KIBIT(キビット)」により、膨大な文献や研究データを解析し、疾患と標的分子の未知の関連性を導き出すシステムだ。
これにより、既存薬の持つ新たな治療効果を発見し、開発期間やコストを大幅に削減できる可能性がある。
背景には、近年顕著となっている「創薬標的分子の枯渇」がある。新薬の成功確率は1%未満とされ、開発には10〜15年以上の期間と数百億〜数千億円規模の費用を要する。
こうした状況下で、安全性が確立された既存薬を新たな疾患領域に転用するドラッグリポジショニング(※)が注目を集めている。
非臨床試験を省略できるため、従来より最大で約60%のコスト削減が期待される。
Meiji Seika ファルマは抗菌薬や免疫・中枢神経領域で強みを持つ企業である。
同社は、長年培った創薬知見とFRONTEOのAI技術を融合させることによって、新たな医療的価値の創出を図る構えだ。
※ドラッグリポジショニング:既存の医薬品を新しい疾患に転用する創薬手法。
安全性データを活用することで開発期間短縮が可能。
AI創薬がもたらす転機 開発効率化と倫理的課題の両立が焦点か
今回の協業は、AI創薬の実用化における重要な転換点となる可能性がある。
FRONTEOのAIは、既存の論文にない関連性を非連続的に発見できる点が特徴であるため、研究者の仮説構築を後押しすることが期待できる。
これにより、研究開発のスピードと精度が飛躍的に向上する展開も考えられる。
また、AIが得意とする情報探索を活かすことで、見落とされがちな疾患関連遺伝子や副次的効果の再評価が進み、創薬の裾野が広がるだろう。
一方で、AIが導出する仮説の妥当性をいかに実証するのかという点については疑問が残る。
特に、アルゴリズムによる推論結果をどのように倫理的・科学的根拠に落とし込み、臨床へつなぐかが、今後の焦点となるだろう。
とは言え、今回の取り組みは、製薬産業の生産性改革だけでなく、医療アクセスの格差是正にもつながる可能性がありそうだ。
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