NTT、国産AI LLM「tsuzumi 2」提供開始 高性能と低コストで企業DXを支援

2025年10月20日、NTT株式会社は軽量かつ高性能な国産大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi 2」の提供を開始した。
電力効率やセキュリティを重視し、企業・自治体の多様なAI活用ニーズに対応することで、日本のDX基盤を支える構えだ。
NTT、純国産LLM「tsuzumi 2」を発表 電力・コスト課題に対応
NTTが開発した「tsuzumi 2」は、2023年に発表された初代モデル「tsuzumi(※)」を進化させた次世代LLMである。
世界的なAI需要拡大に伴い、電力消費や運用コストが課題となる中、同社は1GPUで動作可能な軽量構造を維持しながら、日本語処理性能を世界トップクラスへと高めた。
同モデルは、金融・医療・公共といった専門領域の知識強化により、RAG(外部情報検索連携)やFine Tuning(特化学習)によって業界別カスタマイズを効率化させることが可能となった。
NTT社内では「財務システムに関する問い合わせ対応業務」において、先進他社モデルと同等以上の精度を確認したという。
また、オンプレミスやプライベートクラウド上で安全に運用できる点も特徴である。
東京通信大学では、クラウド依存を避けながら学内データを安全に取り扱う目的でtsuzumi 2を採用。
授業Q&Aや教材・試験作成支援、履修・進路相談のパーソナライズなどでの活用が予定されている。
さらにNTTドコモビジネスは、富士フイルムビジネスイノベーションと連携し、tsuzumi 2を基盤とした生成AIソリューションの検討を開始した。
非構造化データの構造化技術「REiLI」との組み合わせにより、契約書や画像を含む企業データの高度分析を実現する見込みである。
NTTは11月に開催される「R&Dフォーラム2025(IOWN Quantum Leap)」で、tsuzumi 2を活用した最新ソリューションを披露する予定である。国産AIの競争力を国内外に示す舞台となりそうだ。
※tsuzumi:NTTがフルスクラッチで開発した国産大規模言語モデル(LLM)。
国産AIの進化が拓く新たな競争軸 コスト最適化と信頼性強化へ
tsuzumi 2の登場は、海外モデル依存が続いてきた企業AI基盤に新たな選択肢をもたらすだろう。
最大の利点は、電力効率とコスト削減を両立しながらも、機密性の高い環境で運用できる点にあると考えられる。法規制やデータ主権を重視する日本企業にとって、現実的な導入モデルとなりそうだ。
一方で、グローバルLLMと比較した英語対応力や学習データ規模の面では課題も残る。
特に多言語展開を前提とする企業にとっては、補完的な外部AIとの連携が不可欠と考えられる。
今後NTTは、tsuzumi 2を軸に、グループ全体でのソリューション拡充とサイバーセキュリティ分野への応用を進める計画だ。
さらに、AI同士が連携して議論する「AIコンステレーション」構想も開発中である。同システムの実装が進めば、企業内AI運用の自律化が現実味を帯びそうだ。
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