フロリダ州、公的資金の10%をビットコインなどデジタル資産へ投資可能に

米フロリダ州議会が、州の公的資金を暗号資産に投資可能とする「下院法案 183(HB 183)」を提出したと、2025年10月17日に報じられた。
複数の米メディアが報じており、州財政におけるデジタル資産活用の動きが海外で本格化している。
フロリダ州、州公的資金の10%をデジタル資産で運用可能に
フロリダ州議会が提出したHB 183では、州の州財務長官(Chief Financial Officer)に対し、一般歳入基金、予算安定化基金、および各省庁・司法機関の信託・管理基金といった公的アカウントごとに最大10%を「デジタル資産および上場取引商品(ETP)」に投資できる権限を認める。
さらに、州年金運用理事会(State Board of Administration)にも、州退職年金制度の資金を最大10%までデジタル資産に投資できる新たな枠が与えられる。
また、地方自治体年金基金にも同様の比率が適用可能となる。
投資対象の定義には、暗号資産(例えば Bitcoin (BTC))、デジタルコモディティ、デジタル証券、NFT(非代替性トークン)、および米証券取引委員会(SEC)登録の投資会社が発行する上場取引商品(ETP)などが含まれる。
法案には、インフレによる州資金の購買力低下を背景に、ビットコインなどが国際的な価値保存手段として認知されつつあることが明記されており、2025年3月6日に発令された大統領令 14233号に基づく「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」構想を引用している。
また、州民が一定の税金や手数料をデジタル資産で支払うことを認める条項も盛り込まれているほか、受領資産は一般歳入基金に移管され、元のファンドには米ドル建てで補填される仕組みも設けられている。
なお、法案の施行日は2026年7月1日と定められている。
「デジタル財政」への試金石となるフロリダ州の挑戦
フロリダ州のHB183が成立すれば、公的資金運用の新たなスタンダードが築かれるかもしれない。
最大の利点は、インフレ環境下でも資産価値を維持できる“分散型ポートフォリオ”の確立にあると考えられる。
ビットコインなどのデジタル資産を一定割合で保有することで、ドル依存を和らげ、長期的な財政安定性を高められるだろう。
また、税金や手数料を暗号資産で支払える仕組みは、行政サービスの効率化にも寄与し得る。
一方で、短期的な価格変動やカストディ(※)管理の難しさは依然として大きな課題だと考えられる。
運用に失敗すれば州民の信頼を損なうリスクがあるため、慎重な制度設計が不可欠となるだろう。
今後、他州が追随すれば「デジタル準備金」という新たな財政概念が全米に広がる可能性もありそうだ。
フロリダ州が成功例となれば、米国財政の一部がブロックチェーン上で運用される時代が現実味を帯びるだろう。
※カストディ(Custody):資産を安全に保管・管理する仕組み。暗号資産においては、プライベートキー管理、取引記録、第三者管理者の選定などが課題となる。
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