MUFGなど世界10銀行、ブロックチェーンでG7通貨ステーブルコイン発行を検討

2025年10月10日、米バンク・オブ・アメリカや三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)など世界の大手銀行10行が、G7通貨に連動するステーブルコインの共同発行を検討していると発表した。
金融業界がブロックチェーンを正式な決済基盤として取り込む動きが本格化しつつある。
世界10行がG7通貨建てステーブルコイン構想を始動
バンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行、ゴールドマン・サックス、UBS、シティ、MUFG、バークレイズ、TDバンク、サンタンデール、BNPパリバの10行は、G7通貨に連動するステーブルコインを共同発行する可能性を探っている。
10日に出された声明によれば、目的は「規制に準拠しつつデジタル資産の利便性を活かし、市場全体の競争を強化し得る新たな業界横断の提供モデルを探ることにある」という。
このプロジェクトはまだ初期段階であり、各銀行は現実の通貨と1対1で価値を維持する「ステーブルコイン(※)」をパブリック・ブロックチェーン上で発行する意義を検討しているという。
暗号資産市場の拡大とともに、ステーブルコイン導入を検討する金融機関が増えている。
背景には、ビットコインやイーサリアムなどの価格上昇に加え、トランプ米大統領が暗号資産分野を支持する姿勢を強めたことがある。
一方で、各国の中央銀行や規制当局は慎重な姿勢を崩していない。
イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は「銀行からの資金流出を招き、金融システムの安定性に影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らし、ECBのラガルド総裁も「金融政策・安定にとってリスク」だと指摘している。
現状では、テザー社のUSDTがステーブルコイン市場の約6割を支配しており、既存発行体のシェアが高い状況にある。
※ステーブルコイン:法定通貨や国債などの裏付け資産によって価値を安定させた暗号資産。
規制調和と実需拡大が成否を左右
銀行連合によるステーブルコイン構想が実現すれば、信頼性と利便性を兼ね備えた決済基盤の形成につながる可能性がある。
既存の銀行インフラと国際的な送金網を活用することで、グローバルな資金移動の効率化が進み、企業間決済や証券取引の自動化など新たな応用分野が開かれるだろう。
特に、為替リスクを抑えつつリアルタイム送金を実現できれば、貿易や投資の現場におけるコスト構造の見直しを促すことになりそうだ。
一方で、国際的な規制整合性の欠如は依然として大きな障壁だと考えられる。
各国が独自のKYC(本人確認)・AML(マネーロンダリング防止)基準を維持する限り、グローバルな利用拡大には時間を要する可能性が高い。
また、中央銀行デジタル通貨(CBDC)との役割の重複も避けられず、政策当局との調整が成否を分けるだろう。
今後は、実需に基づいたユースケースがどれだけ拡大できるかが焦点となりそうだ。
銀行主導のステーブルコインが小売や決済インフラに浸透すれば、金融のデジタル化を一段と加速させる契機になるかもしれない。
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