追手門学院大学、大学公式アプリにマルチエージェントAIを導入 学生一人ひとりに最適化した学修支援を実現へ

2025年10月14日、大阪府茨木市の追手門学院大学は、大学公式アプリ「OIDAIアプリ」にマルチエージェント構成のAIアドバイザー機能を搭載すると発表した。
生成AIを活用し、学生の履修や就職活動などを個別に支援する仕組みで、2026年3月の正式リリースを予定している。
日本初、大学独自アプリにマルチエージェントAIアドバイザーを実装
追手門学院大学が開発中の「AIアカデミックアドバイザー(仮称)」は、日本で初めて大学公式アプリにマルチエージェント構成(※)を採用したAIアドバイザーである。
大学の統合データベースに蓄積された学修データや行動履歴、就職情報などをもとに、生成AIが学生一人ひとりの状況に合わせたアドバイスを提供する。
学生が「バディエージェント」に相談を行うと、履修、資格取得、留学、就職活動などの領域ごとに専門エージェントが応答を生成する仕組みだ。
この構成により、従来型の単一AIに比べて正確性・保守性・拡張性が向上するという。
また、「Inspire」「Personalize」「Bridge」を開発の3原理とし、AIが全てを解決するのではなく、学生の気づきや挑戦を促す設計思想を採用している。
教職員による対人支援と連携することで、AIと人の協働による学修支援モデルを構築する方針だ。
現在は学内でα版の試行が進められており、2025年12月にβ版を公開、2026年3月に正式リリースを予定している。
※マルチエージェント構成:複数のAI(エージェント)が分担して処理・判断を行う仕組み。
AIが描く「個別最適化教育」の未来
今回の導入は、大学教育のデジタル化を本格的に押し進める象徴的な一歩となりそうだ。
最大の利点は、AIが学生一人ひとりの履修履歴や興味関心をもとに、学びからキャリア形成までを包括的にサポートできる点だろう。
これにより、学生は自身の強みを早期に把握し、より的確な学修計画を描けるようになると考えられる。
AIの分析力が、これまで見過ごされてきた潜在的な才能を可視化する契機となる可能性もある。
もっとも、AIが提示する助言が「最適化」に偏りすぎる懸念は残る。
学修データや行動履歴の扱いには倫理的な配慮が不可欠であり、プライバシー保護を前提とした制度設計も必要である。
さらに、AIによる提案が学生の意思決定を過度に誘導する恐れもあるため、主体性をどう守るかが重要な論点となりそうだ。
今後は、AIがどこまで学生の個性や感情を理解し、教職員との協働を深化させられるかが焦点になるだろう。
AIが単なる効率化のツールではなく、「人の成長に寄り添う存在」へと進化できるかどうか。
追手門学院大学の試みは、教育現場におけるAIの在り方を示す新たな指針となるかもしれない。
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