日立、「HARC for AI」を国内展開 AI運用のガバナンスと信頼性を支援

2025年10月7日、日立製作所はAIエージェントの導入効果を最大化する新サービス「HARC for AI」を国内提供開始した。
AI運用のガバナンスやコスト最適化、セキュリティ対策を包括的に支援し、企業のAI本格活用を後押しする。
AI運用の健全化を伴走支援 日立が新サービス開始
「HARC for AI」は、日立のクラウド運用支援基盤「Hitachi Application Reliability Centers(HARC)」をAI時代に合わせて拡張したサービスだ。
SRE(Site Reliability Engineering ※1)の手法を用い、AI運用における信頼性やコスト管理、セキュリティを一体で最適化する。
海外では2025年4月から先行導入されており、今回日本市場向けに機能を強化して展開する。
本サービスは、AIエージェントの判断の正当性や応答スピード低下、セキュリティリスクといった特有の課題を継続的に観測し、日立のノウハウに基づいて改善を実施する。
さらに、評価フレームワーク「R2O2.ai」により信頼性・責任性・最適性・観測性を担保しつつ、FinOps(※2)の指標を導入して費用対効果を可視化。
MCP(Model Context Protocol ※3)などの標準規格によってデータアクセスの認証・認可も統合管理する。
また、日立グループ内の専門組織と連携し、インシデント発生時の即応体制を構築。
業務ロジックの改善に集中できる環境を提供することで、エンジニアの生産性向上も狙う。
日立はグループ内で200件以上のAI運用実績を持ち、今後も「人とAIが協働する社会」の実現を支援するとしている。
※1 SRE:開発と運用の分業を超え、信頼性と機敏性を両立させる運用手法。
※2 FinOps:クラウド費用の最適化を部門横断で進める運用管理アプローチ。
※3 MCP:AIエージェント間の認証・認可情報を統合管理する標準プロトコル。
「使うAI」から「管理するAI」へ 信頼性マネジメントが次の課題に
今後、HARC for AIは企業のAI戦略における「信頼性マネジメント」の基盤として位置づけられていく可能性が高い。
特に、AIエージェントの自律的判断や生成AIの高度化が進む中で、単に性能を追求するのではなく、運用過程の透明性・倫理性をどう維持するかが企業競争力の焦点となるだろう。
HARC for AIは、こうした課題に対し、AI判断の正当性や応答精度を定量的に監視し、リスクを早期に検知できる環境を整える点で大きな意義を持つ。
一方で、その効果を最大化するには、FinOpsやSREを担う複数部門の連携が前提となる。
データ統治や権限設計が不十分なまま導入すれば、逆にコスト管理やセキュリティリスクが複雑化する恐れもある。
今後は、HARC for AIを単なる運用支援ツールではなく、経営層を含む全社的な「AI運用統治モデル」として活用できるかが鍵となるだろう。
グローバル導入で得た知見が日本企業の標準化に寄与すれば、日立発のAIガバナンスモデルとして国際的影響力を持つ可能性も高い。
日立 ニュースリリース:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2025/10/1007.pdf
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