メタプラネット、「PHASE II」始動 永久型優先株でビットコイン備蓄を強化

2025年10月1日、東証スタンダード上場のメタプラネットが、ビットコイン(BTC)を中核とした成長戦略「PHASE II」を公表した。
株式の希薄化を抑えながら、永久型優先株式による長期的なBTC蓄積を進める方針を明らかにした。
永久型優先株でBTC備蓄を強化、株式希薄化を抑制
メタプラネットは、同社の長期戦略「555ミリオン計画」に基づき、2027年末までに21万BTCの保有を目指している。
これはビットコインの総供給量の1%にあたり、いわゆる「1%クラブ」入りを狙う野心的な目標である。
今回の「PHASE II」では、既存の方針を維持しつつも、資金調達の手段を拡張することで株式希薄化を抑える戦略を打ち出した。
同社はこれまでに累計5,000億円超を調達し、30,823BTCを保有。2025年度の目標値である30,000BTCをすでに達成している。
新たな資金源として活用されるのが、2025年9月に承認されたA種・B種の永久型優先株式である。
永久型優先株は償還期限を持たず、長期安定的な資金調達を可能にする。A種株は普通株への転換権を持たず希薄化を防ぎ、B種株は転換時に一部希薄化が生じる可能性がある構造だ。
配当上限は年6%に設定され、BTC長期蓄積のための原資に充てられる。
また、同社はBTCインカム事業や保有ドメイン「Bitcoin.jp」を中心とするプラットフォーム事業の収益を配当原資とし、広告・教育・イベントなど多様な収益モデルで自立的な循環を構築する方針を示した。
加えて、BTCエコシステム拡張を目的とした「Project NOVA」も始動しており、2026年以降に本格稼働する予定である。
BTCトレジャリー拡張の新モデルに 安定性と透明性が鍵に
「PHASE II」戦略は、メタプラネットが単なるBTC保有企業から、資産運用を通じて収益を生む「BTC金融企業」へと転換する布石になるだろう。
永久型優先株を活用した調達は、長期的なBTC蓄積を可能にする仕組みとして注目できる。
BTC価格上昇時には評価益が企業価値を押し上げ、財務体質の強化や市場信用力の向上にもつながるとみられる。
一方、配当上限を固定する設計やBTCボラティリティ(※)への依存度は、安定運用を目指す上でのリスク要因だろう。
BTC価格下落時には資本効率の低下が避けられず、リスク管理体制の強化が求められそうだ。
それでも、従来の株式発行による資金調達に比べ、透明性と長期安定性を両立する本モデルは、企業財務の新たな選択肢として注目できる。
BTCトレジャリーを経営戦略の中核に据える国内企業は少なく、今後は他の上場企業にも波及する可能性がある。
また、同社が推進する「Project NOVA」は、日本市場におけるBTC経済圏のハブとして機能する可能性が高い。
資本政策と事業戦略を一体化するこの試みは、国内Web3企業の資金調達モデルにも新たな方向性を示すだろう。
※ボラティリティ:価格変動の度合いを示す指標。変動が大きいほど投資リスクも高まる。
関連記事:東証上場企業メタプラネット、米国に新子会社設立へ ビットコインインカム事業を拡大












