NTTグループとメタウォーター、上下水道保守点検をIoT・AIで自動化へ

2025年9月30日、メタウォーターとNTTグループは、IoTとAIを活用した上下水道施設の保守点検業務自動化に向けた実証実験を発表した。
10月より宇都宮市で開始され、持続可能な水インフラの構築を目指す。
上下水道の点検自動化へ、NTTとメタウォーターが実証開始
国内の上下水道事業は、自治体財政の逼迫、技術者不足、施設老朽化という三重苦に直面している。
こうした課題解決に向けて政府は「ウォーターPPP(※1)」を導入し、2031年までに水道、下水道、工業用水道の3分野で225件の公民連携事業を推進する方針を掲げている。
しかし現場では依然として、巡回や目視といった熟練技術に依存した点検業務が主流で、人材不足が大きな制約となっている。
この状況を受け、上下水道事業の維持管理で実績を持つメタウォーターと、通信環境構築やDX推進に強みを持つNTTグループが共同で実証実験に踏み切った。
両社はWi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)などを活用し、広大な施設内の通信環境を最適化する。
さらに、メタウォーターの情報基盤「WBC(Water Business Cloud※2)」や、オペレーションサポートセンター(OSC※3)と連携させることで点検の効率化を狙う。
実験は宇都宮市上下水道局の清原水再生センターで2025年10月から2027年3月まで実施される予定だ。
ネットワークカメラやIoTセンサーが設備データを取得し、生成AIが異常を検知。
警報は現場作業員やOSCへ通知され、ベテラン技術者が遠隔で対応を指示する仕組みを検証する。
※1 ウォーターPPP:2023年に政府が新設した上下水道事業の公民連携方式。2031年までに225件導入を目標にしている。
※2 Water Business Cloud(WBC):メタウォーターが提供する上下水道事業向けクラウド基盤。
※3 オペレーションサポートセンター(OSC):プラント運転状況を24時間監視し、緊急時対応を支援する拠点。
上下水道点検の自動化実証 効率化と課題の両面
NTTグループとメタウォーターによる上下水道施設の保守点検自動化実証は、自治体が直面する人材不足や老朽化対策を補う可能性を持つ。
特に、Wi-Fi HaLowを活用した広域通信やクラウド基盤との連携は、点検の効率化や遠隔支援体制の確立に向けて重要な検証となるだろう。
さらに、生成AIが異常検知を担えるようになれば、巡回や目視に依存した従来作業の負担軽減が進み、長期的にはコスト削減や安定した施設運営へとつながるとみられる。
もっとも、AIの誤検知や通信障害が発生すれば、安全性や対応の迅速性に影響を及ぼす懸念も残る。
自治体ごとのデジタル基盤整備の進度差は導入ハードルになり得るため、確実な運用体制やバックアップ手段の整備は不可欠だろう。
それでも今回の実証は、水インフラの持続可能性を全国規模で高めるための第一歩になると考えられる。
成功すれば、他地域への展開やウォーターPPP事業の加速に波及し、公共インフラ運営の新たなモデル形成に寄与するだろう。
将来的には、AIの導入が教育や業務改善にも広がり、単なる点検自動化を超えて、自治体全体の運営効率化や住民サービス向上に発展する可能性もある。
NTT ニュースリリース:https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/09/30/250930a.html
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https://plus-web3.com/media/_1039-250304wat/











