パキスタン、海外暗号資産取引所にライセンス申請を要請 PVARAが規制枠組みを始動

2025年9月14日に現地紙ダウン(DAWN)が報じたところによると、パキスタンの暗号資産規制機関「パキスタン暗号資産規制庁(PVARA)」が、海外暗号資産取引所やVASP(仮想資産サービスプロバイダー)に対し、連邦制度下でのライセンス申請を求めたという。
国際規制基準に準拠した申請条件を提示
PVARAは、海外の暗号資産事業者に対して連邦レベルでのライセンス取得を求め、申請受付を開始した。
応募資格はSEC(米証券取引委員会)、FCA(英国金融行動監視機構)、EUのVASP(※)枠組み、VARA(アラブ首長国連邦の仮想資産規制庁)、MAS(シンガポール金融管理局)など、主要規制当局から既に認可を受けている事業者に限られる。
さらに、AML(マネーロンダリング対策)、CFT(テロ資金対策)、KYC(本人確認)の各基準を遵守していることを証明する必要がある。
提出書類には会社概要や保有ライセンスの詳細、提供サービス、技術・セキュリティ体制、資産規模、収益状況、コンプライアンス履歴の記載が求められる。
パキスタンでの事業展開を示すビジネスモデルの提示も必須とされる。
PVARAは2025年7月に設立された独立機関で、国内VASPの免許発行・監督・規制を担う。
同機関はFATF(金融活動作業部会)、IMF(国際通貨基金)、世界銀行が定める国際標準を採用している。
財務省は声明で、パキスタン国内にはすでに4,000万人以上の暗号資産利用者が存在し、年間取引額は3,000億ドル(約44.3兆円)を超えることが想定されていると指摘。同国が世界最大級の未開拓市場であることを強調したという。
※VASP(仮想資産サービスプロバイダー):暗号資産取引所やカストディ事業者など、仮想資産に関連するサービス提供者。
国際水準への整合と中小排除リスク、規制の柔軟性が鍵か
短期的には、国際基準を満たす大手VASPや取引所の申請が先行し、投資家保護と透明性が可視化されることで、機関資金や在外送金需要を取り込む土台が整うとみられる。
手数料やカストディの水準が国際比較で平準化し、オン/オフランプの整備も進むだろう。
中期的には、PVARAが監督体制を運用しつつ、AML・CFT・KYCの検証結果を踏まえた細則改定を重ね、上場銘柄やデリバティブの範囲、ステーブルコインの取り扱いなどを段階的に明確化すると予想できる。
その過程で監査・報告のコスト増が中小事業者の参入障壁となり、競争やサービスの多様性が痩せるリスクは残るだろう。
サンドボックスや段階的義務化で負担を緩和できるかが分岐点になると考えられる。
長期的には、規制の可用性が確立すれば、パキスタンは南アジアの暗号資産ゲートウェイとして位置付けを高め、銀行APIやデジタルID、即時決済基盤との連携によりユースケースが拡張するとみられる。
他方で、過度な硬直化が続けば新興プレイヤーが排除され、エコシステム形成が遅れる恐れがある。
最終的な成否は、PVARAが「厳格さ」と「機動性」を両立させ、成長局面では規制を素早く最適化し、不正兆候には迅速に締めるという運用バランスを実装できるかにかかっているだろう。
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