日立製作所、米国で鉄道車両製造を開始 AIロボット導入で「地産地消」加速へ

2025年9月8日、日立製作所が米メリーランド州で、鉄道車両製造工場を本格稼働させた。
AIロボットを導入して安全性を高めつつ、現地生産と雇用創出を通じて「地産地消」型ビジネスを推進する。
AI活用で安全性高める米国新工場が稼働
日立製作所は8日、メリーランド州に鉄道車両の新工場を開業し、ワシントン首都圏交通局から受注した最大22億ドル(約3200億円)規模の車両製造を開始した。
点検や危険作業にはAIを搭載した犬型ロボットを活用し、車両の下部や周囲を巡回して映像を収集、そのデータから欠陥を自動で検知する仕組みを導入している。
さらに、AIはカメラ映像を解析し、危険を察知すると警報音を鳴らして従業員に知らせ、安全確保の役割も果たす。
完成した車両は線路上での試験を経て、首都ワシントンなどで実際に運用される予定だ。
月20両の生産能力を持ち、地域では約1300人の雇用を創出すると見込まれている。
日立製作所の徳永俊昭執行役社長兼CEOは「グローバルにおいて、地産地消で過去5年間で総額120億ドル以上の投資を米国にしてきた」と述べ、現地生産の重要性を強調した。
日立は、鉄道事業に加え、電力変圧器工場を米国内に新設する計画も発表している。
総額10億ドル以上(約1480億円)の投資でインフラ分野を強化し、米国を最重要市場の一つとして位置づけている。
米国事業の成否が鍵 鉄道から社会インフラへ広がる展望
日立製作所の米国鉄道車両製造は、今後の展開次第で大きな転換点となり得る。
短期的には、ワシントン首都圏での車両運用が始まることで、米国事業の信頼性が高まり、新規受注の拡大につながるとみられる。
特にAIロボットの導入効果が具体的に示されれば、安全性と効率性を兼ね備えたモデルケースとして評価され、他拠点への水平展開が加速する可能性がある。
中期的には、鉄道事業にとどまらず、電力変圧器などの社会インフラ分野での投資が本格化すると予想できる。
これにより「社会インフラ×デジタル」という日立の成長戦略が米国市場に定着し、現地企業との協業や地産地消型の枠組み拡大も視野に入るだろう。
ただし、公共事業依存の鉄道市場は政策や規制の影響を受けやすいため、事業継続性をどう確保するかが焦点になるとみられる。
長期的には、米国での成功事例がグローバル戦略のモデルケースとして機能し、欧州やアジアでの現地生産モデルへ波及する可能性もある。
AIとインフラ投資を組み合わせた事業展開は国際競争力を高める一方で、規制対応や人材育成、コスト管理といった課題も残るだろう。
米国市場での実績が積み上がれば、日立が「次世代インフラ企業」として、世界的に注目されることもあり得そうだ。
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