AIで空き家問題に挑む 香川県さぬき市が住宅事業者と連携協定

2025年9月1日、香川県さぬき市は空き家対策の一環として、住宅関連事業を展開するクラッソーネ(名古屋市)と連携協定を締結した。
AIを活用した解体費用や資産価値のシミュレーションサービスを導入し、適切な除却や土地活用の促進を目指す。
さぬき市、AI活用で空き家除却を加速へ
さぬき市は過疎化や高齢化の進行で深刻化する空き家問題に対応するため、民間の住宅関連事業者と協力体制を構築した。
クラッソーネは解体工事のマッチングサービスを得意とし、全国で空き家の活用支援を展開している。
今回の協定により、市はAIを基盤とした「すまいの終活ナビ」を活用し、所有者が容易に解体費用や土地売却価値を把握できる仕組みを提供する。
同サービスには「解体費用シミュレーター」や「固定資産税の試算機能」が搭載されており、解体工事費用をAIによって数値化して示すことが可能だ。
また、「家じまいの相談窓口」の設置や「空き家解決マニュアル」の作成も進め、相談体制の強化を図る。
市はこれらを通じて、空き家放置による景観悪化や防災リスクを減らし、地域住民の安心につなげる狙いである。
背景には全国的な空き家増加の傾向がある。
総務省の住宅・土地統計調査によると、2023年10月時点でさぬき市の空き家は5,260戸にのぼり、空き家率は21.5%と香川県平均(18.6%)を上回った。
「すまいの終活ナビ」さぬき市版:https://www.crassone.jp/simulator/navi/kagawa/sanukishi
AIシミュレーター普及で住環境改善も 課題は費用負担と意識改革か
シミュレーションによって費用感や資産価値を事前に把握できるようになれば、所有者が解体や売却を決断する心理的ハードルは低下し、放置による劣化や周辺環境への悪影響を防ぎやすくなるだろう。
地方自治体にとっても、防災や治安の改善につながり、住環境の質を高める有効な手段となる可能性が高い。
ただし、解体費用や売却に伴う負担をどう分担するかは依然として大きな課題だと考えられる。
特に高齢者が多い地域では、資金的な支援がなければ解体や売却に踏み切れないケースも少なくないだろう。
さらに、「先祖代々の財産」として空き家を残したいという意識も根強く、解体にためらいを示す住民が現実的な障壁となる可能性もある。
そのため、今後はAIによる利便性に加え、金融支援や地域住民への啓発活動を組み合わせた包括的な仕組みが必要になるだろう。
今回のさぬき市の取り組みが先行事例として評価されれば、他の自治体でも導入が広がり、全国的な空き家対策のモデルケースとなる可能性がある。
結果として、政策形成や社会全体の空き家問題解決に大きな影響を与える展開も期待できそうだ。
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