長野県塩尻市、公務員試験に「AI面接」導入へ 返答を解析し質問生成

2025年9月3日、長野県塩尻市が職員採用試験にAI(人工知能)を活用した面接を試験的に導入したと報じられた。
受験者の返答を瞬時に解析して特性や強みを引き出す仕組みで、受験者数減少の歯止めに繋がるか注目されている。
塩尻市、公務員試験でAI面接を初導入
塩尻市は9月7日から始まる職員採用試験で、1次試験の合格者を対象にAI面接を導入する。
活用するのは、東京の企業が開発したシステムで、AI面接官が応募者の返答を分析し、最適な質問を自動生成する仕組みだ。
なお、このAI面接は合否判定には使わず、従来の対面面接で確認していた志望動機や基本的な資質を、事前に把握する目的で導入される。
実際の操作は、画面上のAI面接官が「名前と大学名を教えてください」といった質問を投げかけ、回答内容を解析する。
さらに「粘り強く取り組んだ経験はあるか」などと掘り下げ、返答に応じて次の質問を展開するなど、人間に近い対話が可能だ。
AI面接は場所や時間を問わず受験できる利便性も特徴で、回答内容はテーマごとに5段階で評価され、改善点のアドバイスも提示されるという。
同市の採用試験応募者は2020年に300人を超えていたが、その後減少し、昨年度は200人を下回った。
総務部の嵯峨将太氏は、公務員の志望者数減少に危機感を示し、そのような状況下でAI面接のような最先端技術を活用することで、優秀な学生の興味を引くことの重要性について語っている。
AI面接が教育や企業へ波及する可能性
AI面接の導入は、公務員試験の受験者数回復を狙った施策として注目できる。
短期的には、志望動機や資質を事前に把握できることで採用側の効率化が進み、受験者にとっても自宅で利用できる利便性から応募へのハードルが下がると考えられる。
このため、話題性とあわせて一部の学生層にはプラスに作用する可能性が高い。
中期的には、AIによる解析データの蓄積が進むことで精度が高まり、受験者の特性に即した質問設計が洗練されていく可能性がある。
その結果、公務員採用にとどまらず、教育機関や企業での導入が広がり、塩尻市の事例が先行モデルとなる展開も考えられる。
ただし、長期的な定着には慎重さが不可欠である。
AI面接が補助的役割にとどまるのか、採用プロセスの中心に組み込まれるのかは、社会的な合意形成に左右されるだろう。
公平性や透明性が欠ければ、技術偏重とみなされ信頼を損なう恐れもある。
今後は、AIが持つ効率性を活かしつつ、人間ならではの創造性や共感力をどう評価に組み込むかが重要になるだろう。
塩尻市の取り組みは、公務員採用の新しい形を模索する試みとして注目できそうだ。
ただし、導入の是非や評価方法については、受験者や市民を巻き込んだ社会的な議論がさらに必要になると考えられる。
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