NEC、暗黙知を活用するAIエージェント「cotomi Act」 ウェブ業務の自動化で人間超え

2025年8月27日、NECは暗黙知を学習しウェブ業務を自動実行するAIエージェント技術「cotomi Act」を発表した。
同技術を用いたAIは国際ベンチマーク「WebArena」で80.4%の成功率を記録し、人間の78.2%を上回った。
NEC、ウェブ業務のAI自動化で人間超え達成
NECが開発した「cotomi Act(コトミ アクト)」は、個人や組織に根付く暗黙知を抽出・形式知化し、ウェブ上の業務に応用するAIエージェント技術である。
暗黙知とは経験や直感に基づく知識で、従来のAIが扱うことは難しかった。
しかしcotomi Actは、操作履歴や行動ログから暗黙知をデータ化し、業務文脈を理解する能力を備える。
これにより、ECサイトや掲示板、コラボレーション開発、コンテンツ管理、地図検索などを対象に、フォーム入力といった複雑なタスクを高精度で遂行できるようになった。
評価指標「WebArena」では、従来AIが40〜70%程度にとどまっていた成功率を80.4%まで高め、初めて人間の成功率を超える成果を示した。
NECは同技術を生成AI「cotomi」と組み合わせ、指示が曖昧な状況でも適切に対応できる自律型エージェントとして発展させている。
開発の背景には、日本企業が直面する労働力不足と高度業務の効率化ニーズがある。
暗黙知は従業員個人に属しやすく、共有や継承が難しい。
NECはウェブブラウザーを起点に暗黙知をAIが活用できるようにすることで、専門性の高い業務を含めた業務自動化の幅を広げる狙いだ。
NECは現在、社内でcotomi Actの実証実験を進めている。
2026年度中の商用化を目標に検証を重ねながら、実用化に向けた取り組みを加速させている。
人材不足分野から広がる導入 第二の知的インフラへの道筋
cotomi Actの導入は、人材不足が深刻化する分野での活用が先行する可能性が高い。
短期的には、NECが進める社内実証を通じて精度向上と適用範囲の拡大が図られ、金融や物流、行政など専門性と効率性が同時に求められる現場での導入が進むとみられる。
その後は海外市場も視野に入れ、AIエージェントが人間の業務を部分的に肩代わりする流れが加速するシナリオが描けるだろう。
中期的には、暗黙知を吸収するAIが「第二の知的インフラ」として社会に定着するかどうかが焦点になるとみられる。
もし成功すれば、これまで属人化していたノウハウの共有や継承を可能にし、企業の競争力強化に直結する可能性がある。
一方で、データ管理や責任の所在が曖昧なままでは導入が限定的にとどまるリスクも残るだろう。
長期的には、人間とAIの役割分担をどう再定義するかが問われる局面に至ると考えられる。
AIの自律性が高まるほど、業務効率と生産性の向上が期待できる一方で、判断の偏りや過度な依存といった副作用も無視できないだろう。
そのため、技術の進展に加えて社会的な合意形成や規制・倫理の枠組みづくりが、普及の成否を大きく左右すると予測できる。
日本電気株式会社 プレスリリース:https://jpn.nec.com/press/202508/20250827_02.html
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