エアバス、AI制御ヘリの自律飛行に成功 川崎重工と開発のH145で実証

2025年8月20日、米エアバスU.S.スペース&ディフェンスは、自律飛行ソフトウェア「Hivemind(ハイブマインド)」を搭載したヘリコプターの初飛行に成功したと発表した。
試験機は川崎重工業と共同開発したH145を使用し、米国テキサス州で実施された。
エアバス、H145でAI自律飛行の試験に成功
エアバスは米国テキサス州グランドプレーリーにおいて、H145ヘリコプターにShield AI(シールドAI)の自律飛行ソフトウェア「ハイブマインド」を搭載し、初の試験飛行を行った。
H145は川崎重工業とユーロコプター(現エアバス・ヘリコプターズ)が共同開発した双発多用途ヘリであり、今回の試験はその技術力を改めて示すものとなった。
エアバスによれば、ソフトウェアの統合は2か月未満で完了し、ハイブマインドのモジュール型設計とプラットフォーム非依存性が短期間での導入を可能にしたという。
この成果は、異なる航空機種への迅速な適応性を裏付けるものである。
試験で得られたデータは、米海兵隊が開発を進める自律飛行型ヘリ「MQ-72C」に反映される予定だ。
MQ-72CはUH-72 Lakotaを基にした無人型仕様であり、将来的には「空中物流コネクター(ALC)」として輸送任務を担うことが想定されている。
エアバスU.S.は、今回の成果を踏まえ、他のヘリ機種への展開も検討している。
災害救援から軍事利用まで AI制御ヘリの可能性と課題
今回の試験は、将来的な無人物流や高リスク任務への応用に向けた出発点となるだろう。
敵性圏や大規模災害時といった人員投入が難しい環境において、AI制御のヘリが物資輸送を担えるようになれば、安全性と効率性を同時に確保できる可能性が高まる。
特に災害救援では、孤立地域への即時的な物資投下や医療搬送といったシナリオで実用化が進む可能性が高い。
一方で、課題も残るとみられる。
AIへの依存が高まれば、システム障害やサイバー攻撃に対する脆弱性は避けられず、従来の操縦士による柔軟な判断力が失われることで異常時対応に制約が生じる恐れがある。
さらに、安全性検証や規制整備が追いつかないまま商用化が急がれれば、重大事故のリスクが顕在化するだろう。
今後は、技術的進歩とリスク管理をどう両立させるかが最大の焦点となりそうだ。
それでも、今回の成果は軍事・民生両面に広がる布石と見ることができる。
米海兵隊の「MQ-72C」開発へのフィードバックが進むことで、軍事分野での実戦投入が加速するだろう。
さらに、エアバスが他機種への展開を検討していることは、汎用性の高さを示唆しているとも考えられる。
これが本格化すれば、災害時の救援輸送や緊急医療搬送といった民生用途にも拡張され、空の物流や救援の在り方が一変する未来が見えてくるだろう。
関連記事:ホンダ、米AIスタートアップと提携 自動運転ソフト開発を加速
https://plus-web3.com/media/latestnews_1000_4888/