ソウル市、防犯アプリをAI化 危険地域を回避する帰宅支援ルートを提供

韓国ソウル市が、帰宅時の市民安全を支援するモバイル防犯アプリ「安心」を2025年下半期に大幅改編すると、2025年8月16日に報道された。
新たに人工知能(AI)を活用した危険区域の自動判定と安全な迂回ルート案内機能を導入する。
AIが防犯データを解析し、安全な帰宅ルートを自動案内
ソウル市が提供する防犯アプリ「安心」は2017年に試験運用され、2018年10月より市内全域で本格導入されている。
防犯カメラ管制センターと連携し、リアルタイム監視や緊急通報、帰宅モニタリング、防犯タクシー、スカウト同行サービスなどを提供してきた。
累計ダウンロード数は約15万件であり、緊急通報件数は6733件、うち警察出動は134件に上る。
今回の改編により、交通量、防犯カメラの設置位置、街灯の照度といった都市インフラデータをAIが統合的に解析する。
利用者の現在地周辺における危険区間を自動的に割り出し、安全な迂回ルートを提示する機能が新たに追加される。
また、安全性だけでなくプライバシー保護の観点からも強化が図られる。
「安心映像」サービスでは、防犯カメラの死角で緊急事態が発生した際に、利用者がスマートフォンで撮影した映像を管制センターへ即時送信できる仕組みを導入しているが、新たにAIによる自動マスキング機能を搭載し、映像内の顔や車両ナンバーといった個人情報を自動的に隠す仕様に改良する。
さらに、家族や友人最大3人と位置情報を共有できる「安心友達」機能では、QRコードによる登録操作が簡素化される。
利用者同士の連携が容易になるため、緊急時における相互確認のスピードが向上する見込みだ。
また、市民の意見収集を目的とした通知・問い合わせ掲示板も設置され、運営側と利用者の双方向コミュニケーションが可能となる。
AIによる“予防型”防犯への転換 高度化に伴うガバナンス整備も不可欠
AIを活用した防犯アプリの導入は、事後対応型だった従来の防犯施策を“予防型”へと転換させる契機となるだろう。
今後は、防犯カメラや街灯、交通量データなど複数の都市インフラと連携することで、危険判定の精度は着実に向上していくとみられる。
特に、夜間人口が集中する都市部では、安全な帰宅ルートをリアルタイムに提示する仕組みが公共サービスの一部として定着する可能性が高い。
一方で、AIによる判定アルゴリズムの透明性や、位置情報の取り扱いに対する市民の理解が追いつかなければ、監視強化への懸念が高まる恐れもある。
そのため、自治体はデータ活用のガバナンスを明確にし、プライバシー侵害リスクを最小限に抑える取り組みを同時に進める必要があるだろう。
将来的には、危険エリアの予測にとどまらず、混雑状況や一時的な交通規制といった変数も取り込むことで、よりパーソナライズされたルート提案が可能になると考えられる。
また、他都市とのデータ連携が進めば、通勤・通学といった広域移動にも対応した防犯アプリへと進化することが期待できる。
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