ガンホー元幹部、架空発注で約2.4億円着服 内部監査不備で不正長期化

2025年8月14日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントは、元幹部級従業員が約2億4600万円を着服していたと発表した。
元従業員は懲戒解雇済みで、同社は刑事告訴に向けた手続きを進めている。
元幹部が業務委託を装い着服、別口でも損害発生
同社によると、元幹部は他社が運営する仕事依頼サービスサイトを悪用し、ガンホーを発注者、自らを受注者とする架空業務を複数回発注していた。
これにより、業務委託費名目で支払われた約2億4600万円を不正に取得していたという。
さらに、別の取引先に対しても業務実態のない発注を行い、約1億円を不正に支払うことで同社に追加の損害を与えていた。
この不正は、社内での疑念を契機に外部専門家を交えた調査によって発覚した。
調査の結果、元従業員のコンプライアンス意識の欠如に加え、特定人物に権限が集中し、業務内容が他の社員から見えにくい状態が長期化していたことが判明。
内部監査の機能不全も、不正を許した要因とされる。
ガンホーは、元従業員に対し、刑事告訴などの法的措置を予定している。
また、再発防止策として、全従業員を対象としたコンプライアンス教育の拡充に加え、発注・支払いの承認プロセスを見直し、牽制機能を強化する方針だ。
また、不正リスクを再評価した上で内部監査体制を刷新し、早期発見の仕組みを整えるとしている。
経営責任の明確化のため、代表取締役社長が月額報酬の30%を3カ月間減額されるほか、取締役5名の役員報酬も減額する。
同社は、本件による2025年12月期連結業績への影響は軽微と見込んでいる。
ガバナンス改善と信用回復 競争激化市場で問われる経営姿勢
ガンホーによる迅速な調査結果の公表と刑事告訴の方針は、透明性を確保し株主や利用者への説明責任を果たす施策として、今後も信頼回復の土台になるとみられる。
再発防止に向けた承認プロセスや監査体制の見直しは、組織全体のガバナンスを強化し、長期的には不正抑止力の向上につながる可能性が高い。
経営陣による報酬減額は責任所在を明確にし、社内外に対してコンプライアンス重視の姿勢を示すシグナルとして機能するだろう。
一方で、今回の不正が長期間発覚しなかった事実は、内部監査機能の脆弱さと、権限集中や業務不透明性が温存される組織文化の存在を浮き彫りにしたといえる。
これら構造的課題を是正できなければ、ガバナンス改善の取り組みは表面的なものにとどまる恐れがある。
今後は、この事件を契機に企業ブランディングの再構築を進められるかが鍵となりそうだ。
競争が激化するオンラインゲーム市場においては、ユーザーや株主の信頼確保が競争力維持に直結すると考えられる。
継続的な情報開示と誠実な経営姿勢を浸透させることができれば、失われた信用の回復と持続的成長への道筋を描くことも可能になるだろう。
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