マイクロソフト、Azure OpenAIで「都立AI」構築 16万人が利用する安全な生成AI環境

2025年8月12日、日本マイクロソフトは東京都教育委員会が全都立学校を対象に運用する「都立学校向け生成AI(都立AI)」の構築事例を公開した。
Azure OpenAIを活用し、16万人規模の安全で制御された生成AI環境を実現したものだ。
全都立学校16万人が利用する「都立AI」稼働開始
東京都教育委員会とコニカミノルタジャパンは、Azure OpenAIを活用した生成AI環境「都立AI」を2025年5月に稼働させた。
対象は都立256校に在籍する児童生徒と教職員計約16万人で、閉域のICTネットワークに接続された端末は約1,300台、家庭から持ち込むBYOD(※)端末は約25万台に及ぶ。
同プロジェクトは、1年半にわたる研究校での生成AI活用の検証を経て、文部科学省が2024年12月に策定したガイドラインVer.2.0を受けて計画された。
2025年3月の一般競争入札で、Azure OpenAIの活用提案を行ったコニカミノルタジャパンが落札し、構築と運用を担っている。
東京都教育庁は、教育現場向けに最適化されたセキュリティ・ガバナンス体制の下で、生成AI環境を運用する。
教科書など信頼性の高いデータのみを参照可能にする独自管理や、不適切語句を防ぐフィルタ機能、入力データを再学習に利用しない設定などにより、情報保護を徹底している。
瀧田健二デジタル企画担当課長は「Azure OpenAI は拡張性に優れていて、非常に柔軟な運用が可能です」と述べ、教育現場のニーズに応じた柔軟な運用を強調した。
東京都教育庁は、教育ダッシュボードとのデータ連携や学習履歴の活用も視野に入れ、都立AIを長期的な教育改革の基盤として位置付けている。
※BYOD:家庭で用意した私物端末を学校で利用する仕組み。
安全性と柔軟性を備えた都立AI、教育DXのモデルケースとなるか
都立AIの、外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクを抑えつつ、長期的なモデル更新やマルチモーダル対応が可能な構造は、今後の教育現場における利用拡大を後押しするとみられる。
短期的には、授業のパーソナライズ化、教材作成の効率化、学習履歴分析による指導高度化が進む可能性が高い。
また、児童生徒にとっては学習意欲を引き出す「楽しい授業」の実現、教職員にとっては業務負担軽減といった効果が期待される。
一方で、生成AI特有の情報正確性やバイアスの問題は残るため、運用ルールの整備や教員研修の充実が継続課題となるだろう。
中長期的には、東京都での成功事例を基に他自治体への横展開が進み、日本全体の教育DXを牽引するモデルケースとなる可能性がある。
ただし、そのためには全国的なセキュリティ基準の統一、モデル精度の継続改善、そして現場教員が安心して利用できる体制の確立が不可欠であろう。
こうした条件が整えば、都立AIは教育改革の中核インフラとして長期的な存在感を発揮するかもしれない。
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