ユニバーサル、映画に「AI学習禁止」明記 著作権侵害防止へ予防策強化

2025年8月6日、米ユニバーサル・ピクチャーズが、劇場公開映画のエンドクレジットに「AIのトレーニングに使用することを禁ずる」との警告文を挿入していることが、The Hollywood Reporterによって報じられた。
報道によると、AIによる無断利用を防ぐ狙いがあるという。
複製禁止に加え「AI学習禁止」を明記した新警告文
ユニバーサルは、映画コンテンツが生成AIモデルの学習データとして無断利用されることを防ぐため、エンドクレジットに新たな警告文を追加した。
初めて導入されたのは2025年6月公開の実写版『ヒックとドラゴン』で、その後『ジュラシック・ワールド/復活の大地』や『バッドガイズ2』にも採用された。
この警告は、従来の「この映画はアメリカ合衆国および他国の法律によって保護されています」といった一般的な著作権告知と併記され、「無断複製、配布、上映は民事責任や刑事訴追の対象となる可能性があります」とAIによるトレーニング用途を禁じる文言が盛り込まれている。
背景には、近年の生成AIブームに伴い、著作権者の許諾なく映像や画像が学習データとして収集される事例が相次いでいる状況がある。
欧州では、AI規制法により、AI開発企業は海賊版コンテンツの利用を禁止され、著作物のAI学習からの除外要請に応じる義務を負う。
また、生成AIが著作権侵害を起こした場合は、対応策を講じなければならない。
今回のユニバーサルの措置は、AI規制法のように、米国における防御策の一例といえる。
実効性は限定的 国際的な制度整備と権利者連携が鍵
今回のユニバーサルによる「AI学習禁止」警告文の導入は、今後、権利者の意思表示と無断利用抑止の手段として定着していく可能性が高い。
従来の著作権表示に加え、AIトレーニング用途を具体的に禁じる表記は、訴訟時の証拠性を高め、契約違反の立証を容易にする方向に進むとみられる。
ただし、実効性の面では課題が残ると予測される。
AI開発企業の中には、性能向上を優先し、非公式なデータ取得ルートを利用する動きが続く可能性がある。
法的拘束力を伴わない単独の警告文だけでは、海外事業者や匿名開発者による収集を完全に防ぐことは難しく、効果には地域差が生じる恐れがあるだろう。
そのため、映画会社や音楽レーベルなどの権利者が横断的に連携し、契約書や配信プラットフォーム規約に「AI学習禁止」条項を組み込む流れが拡大すると考えられる。
同時に、国際的な著作権法の整備や、データ取得・利用履歴の透明化義務といった制度改革の議論も加速する可能性がありそうだ。
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