立命館とNTT西日本、生成AIで学び革新へ 児童から卒業生まで対象に共同開発開始

2025年8月6日、学校法人立命館とNTT西日本は、児童から卒業生までを対象とした教育向け生成AIの共同開発を開始したと発表した。
立命館の「学園ビジョンR2030」に基づき、生涯にわたる個別最適な学びを支援する仕組みを構築する。
学園全体を対象に生成AIを活用、学びの個性化を推進
立命館とNTT西日本は、立命館学園の児童生徒・学生・卒業生を対象に、教育向け生成AIを共同開発し活用する取り組みを開始した。
背景には、立命館が掲げる「学園ビジョンR2030」がある。
これは「挑戦をもっと自由に」を理念とし、変化の激しい時代に対応できる人材を育成するため、「学びのイノベーション」「社会との共創」などを目標に掲げるものだ。
具体的には、立命館大学、立命館アジア太平洋大学、各附属校の枠を超えたシームレスな教育・研究を展開し、多様性を「総合知」として教育や研究の高度化を目指す。
今回のプロジェクトでは、日本マイクロソフトとの協定で発表された立命館オリジナルAI「R-AI(仮称)」を本格活用し、電子教科書やLMS(※1)などと連携させ、学習者一人ひとりに最適化された学びを提供する。
さらに、卒業生とのつながりを生かした「LinkU-ID(※2)」による生涯学習や、卒業生同士の交流、後輩へのキャリア支援も視野に入れている。
生成AIを事務作業にとどめず教育そのものに活用する方針を打ち出し、学習の可視化や個性化を推進する構えだ。
※1 LMS(学習管理システム):学習教材の配信、進捗管理、成績評価などを一元的に行うシステム。
※2 LinkU-ID:NTT西日本が提供する証明書発行サービスのオプションサービス。証明書発行サービスで預かった学生IDおよび属性情報を、卒業後も引き続き保管する。
生成AIが拓く「学びの連続性」 立命館モデルの全国展開はなるか
今回の共同開発は、教育分野における生成AI活用の新たなモデルケースへと発展していく可能性が高い。
特に、在学中から卒業後までを一貫して支える「学びの連続性」が担保されれば、生涯にわたるスキル形成やキャリア構築を後押しする基盤となるだろう。
学習履歴や行動特性に基づく個別最適化が進めば、従来の画一的な教育モデルから大きく転換する可能性もある。
一方で、学習データの取り扱いをめぐっては、個人情報保護や透明性の確保が不可欠になるとみられる。
利用者が安心して参加できる制度設計と運用体制が整わなければ、普及のスピードは鈍化する可能性がある。
今後、立命館学園内で成果が実証されれば、他の私学や国公立校にも同様の仕組みが広がる展開が想定される。
ただし、その全国的な普及には制度面・倫理面の課題解決が前提となるだろう。
情報管理の国際基準への準拠や、利用者のAIリテラシー向上が伴わなければ、利便性と安全性の両立は難しいと予測できる。
最終的には、こうした取り組みが単なる教育支援ツールにとどまらず、社会全体の学びの基盤として成熟し得るかどうかが、成功の鍵を握るとみられる。