デルタ航空、AIでの運賃個別設定を否定 米議員の書簡に反論

2025年7月31日、米デルタ航空は、AI(人工知能)を用いて顧客ごとに異なる運賃を設定しているとの懸念に対し、「事実無根」とする回答書を公表した。
米上院議員らの指摘を受けたもので、今後も同様の施策は予定していないと明言した。
AIによる個別運賃設定を「事実ではない」と明言
米デルタ航空は、顧客の個人データをもとにAIを使って運賃を設定しているとの疑念に対し、強く反論した。
これは、上院議員ルーベン・ガレゴ、リチャード・ブルーメンソール、マーク・ワーナー各氏が7月21日付でデルタに送付した書簡を受けた対応である。
議員らは「個人ごとの支払い能力に応じた価格設定」にAIが利用されている可能性を指摘し、価格高騰やプライバシー侵害のリスクに懸念を示していた。
これに対しデルタのエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は、31日付の文書で「当社が『個別型』あるいは『監視型』価格設定のためにAIを現在活用、あるいは活用する方針だという前提で書かれている」と述べた。
さらに、「それは事実ではない。こうした前提が残念ながら世間の混乱と誤解を招いている」と反論した。
さらに同氏は、「デルタがこれまでに利用したか、試験導入中、または今後導入予定の運賃プランの中に、個人データに基づいて顧客ごとに価格を設定するものはない」と明確に否定。航空運賃は市場競争と供給・需要のバランスによって決定されるものであり、個人ごとの「支払い意思」ではないと強調した。
AI運賃の是非に揺れる航空業界 透明性が今後のカギに
デルタの否定にもかかわらず、議員側の懸念は根強いとみられる。
AIによる動的価格設定(※)は、すでにeコマースやホテル業界で広く活用されており、航空業界への波及も時間の問題とする見方がある。
特に、過去の検索履歴や居住地、購買傾向などの個人データをもとに価格が変動する「監視型価格設定」への警戒感は高まっているとみられる。
企業側が透明性を欠いた形でAIを導入すれば、消費者の不信感や政治的圧力が強まる可能性も否定できない。
一方で、AIによる運賃最適化が価格の柔軟性や業務効率を高めるというメリットもある。
空席を最小限に抑えつつ、需要に応じた価格戦略を実現できるため、収益性の向上が期待できる。
今回のデルタ航空による否定は、AI活用と倫理的配慮のバランスがいかに困難であるかを物語っている。
現時点では、デルタは「個別型価格設定」を一切行っていないと明言しており、少なくとも同社においては消費者の不安を払拭する姿勢が見られる。
ただし、業界全体としては動的価格設定の方向に進んでいることも事実であり、今後はAI導入の透明性や説明責任が新たな競争軸となる可能性がある。
※動的価格設定:需要や時間、在庫状況などに応じて価格を柔軟に変動させる仕組み。