韓国政府、独自生成AI開発にNAVERら5社を選定 ソブリンAI構築へ

2025年8月4日、韓国科学技術情報通信部は、韓国独自の生成AI基盤モデルを開発する国家プロジェクトにおいて、NAVERクラウドを含む5企業のチームを主要開発主体に選定したと発表した。
官民連携のもと、AI主権の確立を目指す。
NAVERクラウドなど5社が韓国版AI開発を主導へ
韓国政府は、国内独自の大規模言語モデル(LLM)を開発するための国家プロジェクトにおいて、参加していた15チームの中からNAVERクラウド、アップステージ、SKテレコム、NC AI、LG AIの5チームを開発主体として選定した。
発表は8月4日に科学技術情報通信部が行った。
選定された企業は今後、国家記録院や国史編纂委員会、統計庁、特許庁、テレビ局などからデータを共同購入することが可能となる。
これにより、韓国語を中心とした高品質な学習データの整備が一段と加速するとみられる。
さらに、政府予算から1576億ウォン(約168億円)相当の画像処理半導体(GPU)などの資源が提供される見通しで、技術基盤の整備にも重点が置かれる。
各社の事業範囲や支援内容については8月初旬に協約を締結し、具体的な開発フェーズに移行する予定である。
科学技術情報通信部のペ・ギョンフン長官は、「自国のデータや技術でAIを開発・運用するソブリンAI(※)の拡大を政府が積極的に後押しする」と、国家戦略としての位置づけを強調した。
※ソブリンAI: 国家や特定地域が自国のデータ・資源・法制度に基づいて独自に開発・運用する人工知能のこと。
韓国型ソブリンAI、公共活用進むもグローバル展開には課題
韓国政府が主導する独自のAI基盤モデル開発は、技術的主権の確立を狙う「ソブリンAI」構想の中核を成すだろう。
最大の利点は、韓国語や文化、国内の法制度に最適化されたAIモデルを自国で保有・運用できる点にあるとみられる。
とくに、国家記録院や統計庁といった公共機関と連携することで、質の高いローカルデータを活用した高度な学習が可能となり、韓国独自の社会ニーズに即したAIの実現が期待される。
一方で、生成AI開発はグローバルな競争が激化する領域でもある。
GoogleやOpenAIなどの先行企業に対抗するには、大規模な計算資源、国際水準の研究体制、持続的な資金投入が不可欠となるだろう。
仮に技術的な完成度が劣れば、国内限定の利用にとどまり、商業的・戦略的な成果が限定されるリスクも考えられる。
今後は、官民の役割分担と連携強化が鍵を握ると推測できる。
政府による制度的・財政的な後押しと、企業側の機動的な技術開発が両立すれば、2026年以降に予定されている実証段階を通じて、韓国製AIモデルが公共サービスや産業用途に広く導入される可能性がある。
さらに、韓国語モデルを軸に親和性の高い地域への展開が実現すれば、地域主導型のAIモデル構築における先進事例として国際的な注目を集めるだろう。