韓国政府、AI開発に修士・博士課程の研究者参加を義務化 「韓国型AI人材」育成で自国技術を強化へ

2025年8月1日、韓国の科学技術情報通信省が国家戦略として進める「国家AIファウンデーションモデル(基盤モデル)」開発事業において、参加大学は修士・博士課程の研究者の組み込みが義務化されると報道された。
韓国語や文化に特化した独自AIの実現と、それを担う高度人材の体系的育成を両立させる狙いがある。
AI開発に大学院生を義務参加 国家事業で高度人材の育成へ
韓国政府は、AI国家戦略の柱として進める「国家AIファウンデーションモデル」の開発プロジェクトにおいて、参加する大学に対し、修士・博士課程の研究者の組み込みを義務付ける方針を示した。
主管は科学技術情報通信省であり、国家レベルでの技術力強化と人材育成の両立を図る施策と位置づけられている。
この制度により、大学の研究室やAI専門センターが開発現場に直接関与し、実践を通じて次世代の人材を育てる仕組みが整備される。
韓国では、AI基盤技術の必要性が高まる一方で、大規模モデルを設計・実装できる人材が慢性的に不足している現状が課題とされてきた。
政府は、この「産学協力モデル」によって中長期的に国内のAI人材基盤を強化し、国際競争力の底上げを図る。
科学技術情報通信省の関係者は「人材の内製化こそがAI競争力の核心だ。大学との連携を通じて、単なる実務者ではなく、未来のリーダーとなる研究者を育てる」と述べている。
また、政府は大学院生に対し、研究費や支援制度の拡充を計画しており、官民連携の枠組みのなかで優秀な学生が実用的なAI開発に関われるような環境整備も進める方針だ。
本制度は、2025年後半から段階的に導入され、早ければ年末には予算措置が講じられる見通しだ。
教育と実務の融合、制度の成否は現場次第
韓国政府が打ち出した「AI開発における修士・博士課程の研究者の義務参加制度」は、国家主導で高度人材を育成しようとする先進的な取り組みである。
最大のメリットは、大学と産業の垣根を取り払い、教育と実務を結びつける制度的な接点を生む点にあるだろう。
しかしながら、大学側には教育と研究に加えて実務指導という新たな負担が課されるため、教員の研究リソースが分散し、学術研究の質が損なわれるリスクもある。
今後、この制度がどのように展開されていくかは、大学と政府の連携体制、そして学生に対するインセンティブ設計に大きく左右されるとみられる。
仮に、制度導入初期に選ばれた大学が柔軟な運用を行い、研究資金の支援や就業面での明確なメリットを提示できれば、学生のモチベーションは高まり、制度は成功モデルとして国際的な注目を集める可能性がある。
反対に、支援策が乏しければ、制度は形骸化し、若手研究者の流出を招く結果にもなりかねない。
2025年末以降の本格導入に向け、韓国政府の制度設計と大学現場の実行力が真に問われる段階に入っている。