恵寿総合病院が七尾市でAI乗り合い送迎を開始 高齢者の通院を支援

2025年7月28日、石川県七尾市の恵寿総合病院は、通院者向けの乗り合い送迎サービス「楽のり君」の運行を開始した。
AIを活用して効率的な運行ルートを自動生成し、高齢化が進む地域での交通課題の解決を目指す。
AIでルート最適化 七尾市で新送迎サービス始動
石川県七尾市にある恵寿総合病院は、通院者向けの乗り合い送迎サービス「楽のり君」の運行を28日から新体制で始めた。
利用者の利便性を重視し、従来のドアtoドア型送迎を刷新。市内116か所に乗車場所を設置し、仮設住宅を含む地域全体をカバーする構えだ。
最大の特徴は、生成AIを用いた運行ルートの最適化である。
利用者の予約状況や乗車地点に応じてAIがルートを自動で調整するため、運転手の負担軽減と送迎効率の向上が期待される。
同サービスは、これまでも運行していたが、新型コロナウイルスの影響や能登半島地震により一時中断していた。
地域の交通手段の再構築が求められる中、AI技術を活用した新たな送迎モデルとして再始動することとなった。
董仙会本部・恵寿総合病院の神野正博理事長は「高齢化に伴って運転ができない方が増えています。
乗り合わせの上で地域の方と一緒に病院に来ていただき、気軽に使っていただいて皆さまの足にしていただきたい」と語る。
予約は1週間前から可能で、アプリ・電話・公式LINEを使って、乗車の10分前まで申し込める。
通院支援から生活インフラへ 地方都市が模索する次世代モビリティ
今回導入された「楽のり君」は、高齢者や交通弱者が安心して通院できる手段を提供する点で、地域社会に大きく貢献すると考えられる。
特に、単身世帯や仮設住宅で暮らす住民にとっては、通院という日常のハードルを下げ、健康維持に寄与する効果が期待される。
また、AIによる運行ルートの最適化によって、効率的な送迎が実現し、運営側のコスト削減にもつながる点は、将来的な社会保障費の増加を見据えた際に重要な意義を持つ。
その一方で、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者が予約アプリなどを使いこなすのは容易ではないと考えられるため、地域全体でのサポート体制整備は不可欠だろう。
また、送迎サービスを継続的に運用するうえでは、運転手の人材確保や車両の維持管理といった課題も残されているため、行政や地域事業者による継続的な支援も必要になると思われる。
今後は、医療送迎にとどまらず、買い物や役所の手続き、地域イベントへの参加など、日常生活の幅広い移動ニーズに対応するモビリティサービスへと発展していく可能性がある。
とりわけ、高齢化と人口減少が進む地方都市では、こうしたAI活用型の移動支援サービスが、地域インフラとして定着していくことも考えられる。
全国の中小自治体にとっては、「楽のり君」が今後の政策検討のモデルケースとなるかもしれない。